日本の宇宙スタートアップ「Synspective」、2020年に衛星打ち上げへ。レーダーによる地球観測と宇宙ビッグデータの可能性

「宇宙ビッグデータ」の可能性

SARによる撮影画像

SARによる撮影画像の一例。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測衛星「だいち2号」が撮影した、東京ディズニーリゾートの周辺 (C) JAXA

 Synspectiveでは、こうした衛星群から集めたデータを、経済活動の視覚化と予測、地形と地質構造の観察、災害時などの早急な状況把握などに活用し、企業や政府機関が持続可能な開発、復興計画を実現することに寄与するとしている。  衛星を使ったデータは、それ単体でも役に立つものの、さらに近年では「宇宙ビッグデータ」も注目されている。  宇宙データは、国境などを気にすることなく、地球全体の情報を得られるという点で、ほかにはない大きな価値をもっている。ビッグデータといえば以前から重要なキーワードとして語られてきたが、そうした従来のデータと、StriX-αが撮影するような宇宙からのデータを組み合わせることで、新しい価値を創出でき、ソリューションとして幅広い分野に提供できるようになっている。  こうしたソリューションは、従来からアイディアはあったが、それがいま実現しつつある背景には、近年の技術革新がある。  たとえば、StriX-αのような小型かつ高性能で、コンステレーションによって地球全体を準リアルタイムで観測できる衛星が実現できようになり、またそうした衛星からのデータを受け取る地上のアンテナなど、インフラの技術革新もあり、さらにAIやクラウドなどの宇宙以外の技術革新も進んだことで、より効率的なデータ収集や分析ができるようになった。その結果、宇宙ビッグデータが、意思決定につながる実用的で詳細な情報である「アクショナブル・データ」として使えるようになってきているのである。

現状把握から未来の予測まで活用できる

 具体的な利用先としては、まず農業や水産業といった、一次産業の分野がある。こうした分野は従来から衛星データが使われていたが、それがより活発になり、作物の生育状況を読み取ったり、いつ収穫や漁するのがいいかといった判断をしたりといったことに使うことができる。  また、他国の石油や鉄鉱石などの備蓄量も読み取れるため、その国の国力や政策が見て取れたり、外交に活用したり、ビジネスにおいては先物取引に活用したりといったこともできる。  さらに、衛星から測定した気温や湿度、紫外線量などを、健康・美容産業に活かしたり、スポーツ選手のトレーニングや実際の競技に活かしたりなど、これまで宇宙とあまりかかわりのなかった「非宇宙産業」にも、宇宙ビッグデータの利用が大きく広がっていくと期待されており、すでに研究も進んでいる。  とくに、いずれの場合においても、現状の把握から、未来の予測にまで使えるという点が大きなポイントである。
次のページ
地球観測ビジネスで存在感を放つ日本
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会