SARによる撮影画像の一例。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測衛星「だいち2号」が撮影した、東京ディズニーリゾートの周辺 (C) JAXA
Synspectiveでは、こうした衛星群から集めたデータを、経済活動の視覚化と予測、地形と地質構造の観察、災害時などの早急な状況把握などに活用し、企業や政府機関が持続可能な開発、復興計画を実現することに寄与するとしている。
衛星を使ったデータは、それ単体でも役に立つものの、さらに近年では「宇宙ビッグデータ」も注目されている。
宇宙データは、国境などを気にすることなく、地球全体の情報を得られるという点で、ほかにはない大きな価値をもっている。ビッグデータといえば以前から重要なキーワードとして語られてきたが、そうした従来のデータと、StriX-αが撮影するような宇宙からのデータを組み合わせることで、新しい価値を創出でき、ソリューションとして幅広い分野に提供できるようになっている。
こうしたソリューションは、従来からアイディアはあったが、それがいま実現しつつある背景には、近年の技術革新がある。
たとえば、StriX-αのような小型かつ高性能で、コンステレーションによって地球全体を準リアルタイムで観測できる衛星が実現できようになり、またそうした衛星からのデータを受け取る地上のアンテナなど、インフラの技術革新もあり、さらにAIやクラウドなどの宇宙以外の技術革新も進んだことで、より効率的なデータ収集や分析ができるようになった。その結果、宇宙ビッグデータが、意思決定につながる実用的で詳細な情報である「アクショナブル・データ」として使えるようになってきているのである。
具体的な利用先としては、まず農業や水産業といった、一次産業の分野がある。こうした分野は従来から衛星データが使われていたが、それがより活発になり、作物の生育状況を読み取ったり、いつ収穫や漁するのがいいかといった判断をしたりといったことに使うことができる。
また、他国の石油や鉄鉱石などの備蓄量も読み取れるため、その国の国力や政策が見て取れたり、外交に活用したり、ビジネスにおいては先物取引に活用したりといったこともできる。
さらに、衛星から測定した気温や湿度、紫外線量などを、健康・美容産業に活かしたり、スポーツ選手のトレーニングや実際の競技に活かしたりなど、これまで宇宙とあまりかかわりのなかった「非宇宙産業」にも、宇宙ビッグデータの利用が大きく広がっていくと期待されており、すでに研究も進んでいる。
とくに、いずれの場合においても、現状の把握から、未来の予測にまで使えるという点が大きなポイントである。