満員電車から子どもを守りたい。「子育て応援車両」で子育てしやすい社会をつくる
「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」が発足。子どもや子連れが安全に移動できる「子育て応援車両」の設置と「子どもを安全に移動させるための啓蒙活動の実施」を求め、2月に東京都の小池百合子都知事に要望書を提出した。
団体の代表を務めるのは、都内で夫とデザイン会社を経営する平本沙織さん。行動の背景には、自身が鉄道利用時に体験した不快な経験がある。
平本さんは2年前、最寄りから数駅離れた場所にある一時保育を利用するため、当時0歳の長男とともに満員電車に乗車した。そこで中年男性から「ベビーカーで乗ってくるな」などと言われ、平本さんはとっさに「抱っこ紐だったら子どもが死んでるわ! ベビーカーも歪むのに」と言った。
「ぎゅうぎゅう詰めの車内で、ベビーカーが場所を取ることはわかっています。でも、抱っこひもでは他の乗客が子どもを圧迫し、危険です」(平本さん)
昨年12月、平本さんが当時のことをツイッターに投稿したところ、予想を超えた反響があった。「税金つかってでも育児用車両作るべき」「似た経験がある」など賛同のコメントがあった一方、「満員電車にベビーカーはやめてほしい」「ラッシュの時間帯に利用しなければいい」など、批判的な意見も目立った。
ラッシュ時間帯の電車に乗らずにすめばいいが、都心の保育園事情は厳しく、自宅から離れた保育園を利用しなければならないことがある。その場合、満員電車を使わざるをえない。
平本さんのように、電車やバスで子連れの母親はしばしは「邪魔者扱い」される。平本さんは何度も車内で「子連れは邪魔だ」と言われたり、エレベーター待ち中に「お前は後から乗れ」などの発言をされたりした。
電車は公共交通であり、みんなのために存在するはずだ。しかし、現状では子どもや子連れ利用客に対して優しくはない。
「そもそも現在の駅や電車のつくりは、健常の成人をベースにデザインされています。抱っこ紐やベビーカーを押す親にとっては、ちょっとした階段すら移動が困難です。
さまざまな人が利用できるよう設計されるべきなのに、今のままでは使いにくかったり、危険にさらされたりする人がいる。子どもが安全に公共交通を利用できる環境を整えないといけないと感じました」(平本さん)
平本さんの行動は早かった。「不満を抱くだけでは、現状は変えられない」との想いで、今年1月には「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」を立ち上げる。
そして15歳までの子どもを持つ保護者を対象に「子どもの安全な公共交通機関利用に関するアンケート」を行い、子育て当事者がおかれる状況の把握に努めた。
アンケートでは、約9割が「電車は子どもにとって危険な状況だと思う」と答えた。混雑した車内で邪魔者扱いをされたり、乳幼児の場合は乗客から押しつぶされそうになったりするリスクがある。小学生は背が低いため、周りにいる大人の視野に入らず、ぶつかられて怪我をするおそれもある。
また、「車内が安全ではない」「子どもが騒いで、周囲の迷惑になる」といった理由から、電車や地下鉄ではなく他の交通機関利用を選択する人が多いこともわかった。
ほかにも、
「子供が2才になりたてのとき車両内で騒いだら、初老の男性に頭ごなしに怒鳴られたのがトラウマになっています」
「子供を連れているのを不快に思う人はわざと子供に当たってきたり、子供乗せるなよ。と呟く人もいたりして、その時は電車を降ります」
など、保護者からさまざまな苦悩が寄せられている。
平本さんは、「これだけたくさんの人が、電車や地下鉄に使いづらさを感じています。とりわけ『電車が子どもにとって危険』との事実は見過ごせません。いま子どもたちが抱えるリスクを取り除かなければならないと思いました」と話す。
満員電車にベビーカーで乗車した際、周りから「邪魔だ」と暴言を吐かれたり、ベビーカーを蹴られたりした、という話を聞くことがある。そのため、利用をためらう保護者もいる。
この状況を変えようと今年1月、保護者団体みんなのための交通機関で、子どもが危険にさらされている
「うるさい!」と怒鳴られ、トラウマになる保護者も
1
2
ハッシュタグ