高学歴の貧困層が増加しているのは日本も同じ。「韓国の労働環境は日本の近未来」と警鐘を鳴らすのは政治学者の木村幹氏だ。
「確かに韓国はお世辞にも住みやすい国だとは言えない。しかし、だからと言って韓国経済が破綻しているというのは早計です。熾烈な競争社会の中で学生たちはガリガリ勉強するし、英語もしゃべれる人が多い。彼らの人材としての国際競争力は日本よりも高いでしょう。厳しい競争により、“スーパーグローバル人材”が誕生していることに目を向けるべきです」
韓国では’97年のアジア通貨危機や’08年のリーマンショックが直撃したことで、日本よりもダイナミックにアメリカ型の合理的経営にシフトしていった。これにより、もとより厳しかった競争原理はさらに加速化していく。
「韓国の大学生は“スペックを上げる”という表現を好んで使う。大学を卒業しても望むような就職先がない場合、大学院に進むなり、海外留学するなりして、自らの価値を高めようとする。上昇志向は非常に強いですね」
韓国の失業率が高い理由として、「大卒が職を選ぶ」という側面もある。大学進学率が急速に上がり大卒が当たり前になる一方で、その社会的ステータスは高いまま。「大卒の就くべき職業」というイメージが一般的に存在しているのだ。大学を卒業したのに、わざわざ工場のラインで働きたがる人はいないというわけである。
「今の日本は団塊の世代が職場からいなくなり、一時的に就職率が高くなっている部分もある。また、かつて大卒が就かなかったような仕事をやっているという見方もできます。韓国は単純労働や農村における労働力を補うため、早々と200万人の移民政策に着手した。それでは、日本はどうするのか? 移民を受け入れたら、就職率は下がるかもしれない。でも、日本人の新卒はなかなか農村では就職しない。地方がダメになれば、それこそ国の基盤がガタガタになる。韓国の状況は対岸の火事ではないのです」
厳しい競争社会に疲弊しつつも国際競争力を高める韓国。居心地はいいもののグローバル化に立ち遅れる日本。韓国ほど極端な競争社会にならないようにしつつ、グローバル化に対応できる人材をどう育てるか? なにも韓国を模倣しろとは言わない。しかし他山の石とすべきとは言えそうだ。
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