どうすれば、感情の解釈の幅を狭めることが出来るでしょうか。
方法は2つあります。一つは、
感情が抑制された理由あるいは感情の原因を直接的あるいは間接的に深掘り質問する、という方法です。
「なぜあなたは今、笑い顔を抑制したのですか?」と直接聞くことも状況が許せばあるでしょう。あるいは間接的に「あなたが受けている非難について、率直な意見を教えて下さい。」と質問し、非難や嫌疑についてゴーン氏がどう感じているか情報収集し、他の証拠と照らし合わせ、真実を解明していく方法もあるでしょう。
もう一つの方法は、感情抑制のクセを特定するという方法です。例えば、私たちは「あなたはウソをつくときに、いつも髪をいじるのね」そんなことを言います。
長く付き合い、よく知っている人物について、例えそれが科学的に証明されているウソのサインでなくても、その人独自の「ウソをつくときにするクセ」をときに発見します。同様の視点が今回のゴーン氏の表情分析にも欠かせません。
残念ながら、7分の短い動画だけではゴーン氏のクセを特定することは出来ません。他の場面で同様の微表情が生じたときにその意味を調べることで、ゴーン氏のクセを特定することが出来るかも知れません。
今回のように容疑が深まっている人物の言動を観察・分析するときほど、偏った見方ではなく、客観的な分析視点を保てることが、真の人間理解には重要だと考えます。
【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『
ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『
「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『
0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。