ゴーン容疑者はビデオメッセージで、なぜ”幸福の表情”を見せたのか? 専門家が分析

清水建二
 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。2019年4月9日、カルロス・ゴーン氏の動画メッセージが公開されました。本日は、ゴーン氏の表情分析から学べる人間理解の視点を解説します。

ゴーン氏がビデオメッセージで見せた不思議な表情

 分析動画は、ゴーン容疑者のビデオメッセージです。  7分37秒に渡る動画の中で、全体的にゴーン氏の言動は一致しており、伝えたいメッセージがストレートに伝えられています。しかし、38秒前後の部分において言動が不一致な瞬間が観られます。  ゴーン氏は「そして、それらの嫌疑に基づいて私に対してなされている非難についてもまた事実無根です。」と自身の無実を訴えています。  一見すると、険しい表情でこのネガティブな文言が語られていますが、よく見ると、「非難(accusation)」という言葉を発する直前、「頬が引き上げられる」+「口角が引き上げられる」という表情を見せています。これは、”幸福の微表情”と言われるものです。ネガティブな言葉にポジティブな表情が伴っているため、言動が一致していません。  微表情とは、感情が抑制されるときに無意識に生じる瞬間的な表情のことです。

ゴーン氏はなぜ幸福の微表情を浮かべたのか?

 ゴーン氏は、なぜこのネガティブなメッセージを発するとき、幸福の感情を抑制させたのでしょうか。  ウソと微表情(一部、普通の表情・感情含む)との関係を探る一連の研究によって、ウソつきは正直者に比べ、恐怖・嫌悪・軽蔑・罪悪感・幸福の微表情を浮かべることがわかっています。  ちなみにウソをつくことによって生じる幸福表情を「騙す喜び」といいます。これらの微表情がある人物の顔に浮かべば、いわゆるウソのサインということになります。  しかし、こうしたサインは、あくまでもウソつきの顔に傾向的に多く生じるということで、正直者の顔にも生じ得る、ということに注意しなくてはいけません。これを忘れ、ウソのサインをウソの証拠だと断定するならば、多くの冤罪を生み出してしまうでしょう。  それでは、ゴーン氏の幸福の微表情の理由は何が考え得るでしょうか。もちろん「騙す喜び」という可能性は捨てきれません。  しかし、自分に向けられた「非難」に対し苦笑するものの、この表情をこの場で現わすのが不適当と考え抑制したのかも知れません。はたまた、自分が伝えようとしたメッセージを度忘れして、面白くなってしまっただけなのかも知れません。このように幸福を抑制する理由はウソ以外にも様々です。
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常に中立的な視点で感情を解釈する姿勢
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