社会・政治・経済の先行きに対する不信感が増した2008年
●2008年
(トップテン)埋蔵金/中川秀直(元自民党幹事長)
”「埋蔵金」論争のきっかけは、「自民党財政改革研究会」が2007年にまとめた報告書にある。特別会計の積立金を埋蔵金にたとえて、特別会計を見直せば数十兆円単位で金が捻出できるという議論である。”
特別会計とはなにか。予算単一の原則が存在するものの、財務省によると「1 特定の事業を行なう場合」「2 特定の資金を保有してその運用を行う場合」「3 その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合」には法律によって特別会計を設置可能で、2017年時点で13本の特別会計が存在するという(出典:
財務省「特別会計」より)。
この特別会計が少子高齢化や長く続く不景気などで財源が逼迫し始めるなかで、まさに埋蔵金として「有効活用」できるのではないかという期待が高まった。後の、民主党政権でも財源の目処がたたない政策の新規財源になりうるのではないかと思われたが、実際には行政のムダを省く事業仕分けなどと組み合わせてもそうは機能しなかった。現在では、予防線を張るためか、財務省は平成31年度予算で特別会計の歳出総額が389.5兆円だが、会計間の相互の重複等を除くと197.0兆円で、国際償還費や社会保障給付金、地方交付税交付金、復興経費を除くと、6.1兆円しか残らず、それらも雇用安定事業等の保健事業が4割、石油備蓄等のエネルギー関連が2割にのぼる旨をかなり詳しく紹介している(参照:
財務省「特別会計の歳出予算額」、「
「6.1兆円」の内訳について(平成31年度予算)」等)。政治の過剰期待に対する予防線にも見えてくる。
他にもトップテンとして「後期高齢者」「蟹工船」「あなたとは違うんです」など、
社会、政治、経済の先行きに対する不信感を表現した語が複数選出されている。変革の流れが政治的に具現化するのが2009年の第45回衆議院議員総選挙であり、当時の民主党はその受け皿となった。
<文/西田亮介 Photo via
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にしだ りょうすけ●1983年、京都生まれ。慶応義塾大学卒。博士(政策・メディア)。専門は社会学、情報社会論と公共政策。立命館大学特別招聘准教授等を経て、2015年9月東京工業大学着任。18年4月より同リーダーシップ教育院准教授。著書に『
メディアと自民党』(角川新書)、『
なぜ政治はわかりにくいのか』(春秋社)など