外面は「良い旦那」。知らぬ間に妻の心身を蝕むソフト・モラ夫の手口<モラ夫バスターな日々6>

大貫憲介

真綿で首を絞めるように妻を追い詰めるのが「モラ夫ソフトバージョン」である

 

「結婚」は我慢するためのものじゃない

 私、大貫憲介は30年間、弁護士として離婚事件を扱い、妻たちの涙を見てきた。夫たちは、横暴に振舞い、妻たちは虐げられていた。  支配服従は妻を追い込み不幸せにする。夫たちは、妻子から疎まれ、家庭での居場所をなくす。或いは、妻が我慢の限界を超え逃げ出す。  夫の横暴は、家庭を壊し、皆を不幸にするのである(プライバシーへの配慮から、この連載で紹介する事例は、適宜、加工し、特定できないように工夫している)。  モラ夫には、精神疾患や一定の人格障害があると考える精神科医等もいる。確かに、精神疾患や人格障害のあるモラ夫もいるだろう。また、モラ夫の言動は、しばしば精神疾患や人格障害を疑わせる。  しかしモラ夫は、もっと広く一般的に存在している。これは、離婚実務上、明らかである。この点については、後日改めて述べる。  さて、夫の横暴な振舞いに悩まされ、妻が周りに相談すると、「男なんてそんなもん」「長男と思えばいい」「我慢が足りない」などと言われることが多い。離婚に抵抗のない弁護士ですら、「その程度のことでは、離婚は難しいですねぇ。皆さん、それくらい我慢してますよ」などと言い出すこともある。  はっきり言おう。結婚は、我慢するためのものではない。そもそも、幸せになるために結婚したのである。一方の当事者に我慢を強いるのは間違っている。  ところで、モラハラと言うと、日常的に怒鳴ったり、イジメたりするのが典型例である。しかし、誰が見ても激しいイジメでわかり易い「ハードモラ」だけでなく、夫婦間には「ソフトモラ」が存在する。  一見すると、軽い態様で、イジメとは思えない。そのため、当事者も、周囲もモラハラであると認識しない。妻が周囲に訴えても、「優しい旦那さんじゃない」などと言われてしまう。  しかし、妻を支配する意図をもって日々繰り返されることにより、妻の心身に毒が回っていく、そんなモラハラがある。

「誰が稼いでいるのかな?」

 30代前半の共働きの夫婦の話をしよう。  待望の第1子を妊娠し、妻は、出産育児休暇を取った。妻が休みに入ると、それまで多少は家事を手伝っていた夫が豹変した。モラスイッチが入ったのである。  夫は、家事を全くしなくなった。そして、家事チェックが始まった。帰宅すると、まず、部屋の中を点検する。隅の埃を見つけ、「なんで、ここに埃があるのかな?」、冷蔵庫を開けて、「この萎びたナスは何かな?」、ソファの上の取り込んだままの洗濯物を見つけ、「なんでしまってないのかな?」などと質問モラを連発する。  妻が、育児の大変さを訴えると、「誰が稼いでるのかな?」と妻をけん制する。  妻は、実母の応援を頼み、掃除、洗濯、食事の準備と家事を完ぺきにこなそうと努力した。しかし、努力しても、夫は評価しない。
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妻にも、モラハラを受けている自覚がない
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