最後に、肱川支流河辺川の山鳥坂ダム建設予定地の紹介をします。現在、建設予定地の地質調査をしていますが、ダム本体には全く未着手です。但し、ダム準備工事の準備工事は山上で行っており、ダム建設に伴う県道の付け替えが進んでいます。常套手段の既成事実化で、八ッ場ダムなどでも行われてきたものです。
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山鳥坂ダム建設予定地 2019/3/21 撮影 牧田
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山鳥坂ダム建設予定地 2019/3/21 撮影 牧田
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山鳥坂ダム建設予定地の斜面(ちいさな河面が見える) 2019/3/21 撮影 牧田
山鳥坂ダムは、当初、松山市への分水のために計画された利水ダムでしたが、分水の費用対効果が極めて低いと評価され、
1998年に自公保与党三党によって事業廃止が勧告されましたが、愛媛県の強硬な巻き返しで継続され、2013年に安倍政権によって治水専用ダムとして事業続行されています。
山鳥坂ダムは、典型的な
長期化・曰く付きダムです。また、
周辺事業の既成事実化によってダム建設を強行するダム建設のためのダム事業の典型事例といえます。
山鳥坂ダムについて利水ダムとしてはその
正当性が1998年の時点で否定されており、水利権の調整にも失敗したために
利水ダムとしての実現性はありません。
治水ダムとしては、肱川が事実上の無治水河川、未完成治水河川であるために
事業効果はありません。むしろ
河辺川、肱川合流点でのダム災害を誘発する可能性があり、鹿野川ダムの治水機能を阻害する可能性もあります。
治水事業としてダム建設を行うならば、肱川にはその前にやることが山積しており、新ダム建設に行政資源を割く余裕はありません。
私は、治水・利水事業としてのダム建設を否定しませんが、
70年間、ダム建設のためにダムを造ってきた結果が無治水河川肱川、欠陥治水河川肱川であって、その結果が肱川大水害という行政災害といえます。
70年間、順番を完全に間違えてきたのです。
行政を監視し、ただすのが地方議会ですが、過去70年間、その責を放棄してきた結果が今の欠陥河川肱川であり、肱川大水害といえましょう。
行政の第一の仕事は、市民の命を守り、次いで財産を守ることです。議会はその監視者です。肱川の河川計画では、治水の8割から9割を河道整備が、1割から2割をダムが担います。ダムの役割は時間稼ぎです。現状の欠陥河川肱川は、河川の流下量が無治水地区の多数残存によって70年間本質的には変わらず、ダムは出来ても効果は大きく阻害されます。まさに宝の持ち腐れです。ダムの機能を発揮させれば無治水箇所から中〜大規模水害を起こし、また多数の市民が犠牲になります。
肱川水系 河川整備計画 2004年5月。国土交通省四国地方整備局 愛媛県。なぜか時期が示されていない(常套手段)
今は、肱川全区間の河道改修に全力を投じるときでしょう。山鳥坂ダムは、その後で十分ですし、そうでなければ意味がありません。最悪の場合、殺人ダムと化します。
今が選択の時と愚考します。
本稿、今後は項目毎に続きます。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』第3シリーズ水害編-8
<取材・文・撮影/牧田寛 Twitter ID:
@BB45_Colorado photo by
Nuclear Regulatory Commission via flickr (CC BY 2.0)>
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についての
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