そして支配が確立すると、さまざまなモラハラに発展していく。
◼ ガン無視
怒ったり、説教した後、モラ夫が全く口をきかなくなることがある。数日、数週間続くこともある。これにより、多くの妻のメンタルがやられる。
◼ 自己批判
怒鳴られ、説教されたのち、「本当に反省しているのか、自分のどこが悪いのか言ってみろ」と自己批判を強要される。もともと正解はないことが多い。つまり、妻が、どんな答えを言っても、「は? 全然わかってないな」とさらに説教が続く。これが繰り返されて、妻は、自尊心を削り取られていき、萎縮していく。
◼ 容姿モラ/体重モラ
容姿をけなし、太ったことを執拗に指摘する。そして、「女を捨てたのか」「お前を女としてみれない」などと責め立てる。妊娠、出産で、妻の心が子どもに向く頃から始まることが多い。妻の自尊心がズタズタになるまで行われることがある。
◼ 経済モラ
1日当たり、1月当たりの生活費を厳しく設定し、家計簿を提出させて管理するモラ夫もいる。さらに、提出させたレシートを細かく点検し、「なんだこれは、贅沢だな」なとど、無駄遣いを指摘するモラ夫もいる。生活費はレシートと引換えに渡すという事例もある。
◼ 囲い込み
実家や友人との連絡等を制限し、孤立化を図るモラ夫も少なくない。孤立化させることにより、支配従属関係が確立しやすくなり、支配従属関係からの脱出が困難になっていく。
◼ ワンオペ
家事、育児は女の義務、仕事であるとモラ夫は信じている。その結果、家事、育児は、妻のワンオペとなる。
2016年の夫の育児関与率は、妻が専業主婦の場合、29.6%である。すなわち、7割の夫は育児に関与していない。日本男性は、平均育児時間が少ないだけでなく、そもそも関与していないのである。では、共働きの場合はどうか、夫の育児関与率は、31.0%である。妻が働いていても、関与率に大きな変動はない。(参照:
内閣府男女共同参画局の調査)
30年間の弁護士実務を通じて、つくづく思う。日本男性は、モラ夫の割合が極めて高い。私の実感では、日本男性の8割はモラ夫だと思う。
育児に関与しない夫は、モラ夫である可能性が高いと言ってよいだろう。日本男性の7割は、性別役割分担意識を盾に育児から逃げているのであって、モラ夫/モラ夫予備軍に違いないと思う。
私は、危機感を抱いている。モラ文化を変えないと、さらに、生涯未婚率が高まり、少子高齢化が進むだろう。そして、日本は沈んでいく。
まんが/榎本まみ
【大貫憲介】
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『
入管実務マニュアル』(現代人文社)、『
国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『
アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(
@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中