液体ミルク解禁に「愛情不足」と筋違いな批判。苦労を押し付けて誰が幸せになるのか?

 2019年3月、日本で初めて乳児用液体ミルク(以下、液体ミルク)の発売がスタートした。  粉ミルクをお湯に溶かす必要がなく、開封してすぐに乳児に与えられる。日々の育児の助けになるほか、お湯が手に入りにくい災害時に役立つ。国内では、2016年の熊本地震で使われたこともある。  以前から要望が強かっただけに、ネットでは販売開始を歓迎する声が多い。だが「子育てで楽をしすぎだ!」といった批判も寄せられている。

常温保存で賞味期限は6か月 開栓してすぐに飲ませられる

 日本では粉ミルクのみ販売が許可されていたので馴染みがないが、液体ミルクはアメリカやイギリス、フィンランドなどでは店頭に並んでいる。  日本で液体ミルクの販売ができなかった理由は、そもそも安全性の規格がなかったためだ。だが市民団体や保護者からの要請もあり、2018年夏に法が改正。製造基準が設定され、販売開始に至った。  3月時点では、江崎グリコが製造・販売をしている。同社の資料によると、125ミリリットルで200円(税別)。賞味期限は約6か月で、常温保存できる。ドラッグストアのほか、オンラインストアで購入できる。衛生面から、開栓したら飲み切る。明治も4月下旬から全国で発売する予定だ。  液体ミルクの手軽さは、開封してすぐに使えること。このメリットは大きい。一方、粉ミルクは、次のような調乳の手順を踏まなければならない。 ・必要量の粉ミルクを専用スプーンで哺乳瓶に入れる(筆者が使っていたのは一杯で20ミリリットル分だった) ・熱湯で粉ミルクを溶かし、溶け残りがないように混ぜる ・哺乳瓶に水をかけ、適温までミルクを冷ます(もしくは、あらかじめ用意した冷まし水を加えて冷ます) ・子どもに与える  対して液体ミルクはといえば、 ・開ける ・飲ませる と、その差は歴然だ。

粉ミルクだと熱湯と冷まし水を持ち歩かなければならなかった

 調乳プロセスが多少面倒でも、1日に1〜2回なら我慢できる。しかし、ミルクをたくさん必要とする新生児期には、1日に10回近く授乳することもある。このうち全てでなくても、体が辛い時や夜間の授乳を液体ミルクで行えたら、親の負担は軽くなる。  筆者も夜間の授乳はきつかった。ミルクを求める子どもの泣き声で起こされ、眠気まなこをこすりながらキッチンでミルクの準備をした。  外出時には、熱湯と冷まし水をそれぞれ水筒に入れて持ち歩き、ミルクを求められれば、駅のホームや公園のベンチで粉ミルクを調乳して子どもに与えた。ショッピングセンターによっては赤ちゃん用スペースに調乳用のお湯が出るところがあるが、すべてではないため、持参する必要があったのだ。  液体ミルクがあれば、そんな苦労がなくなるし、荷物も軽くなる。液体ミルクの販売解禁のニュースが流れると、ネットでは「自分の子どもたちが乳児の頃にあったら、どんなに楽だったか」「外出時に便利」など歓迎ムードが漂った。  子育て経験者の筆者も液体ミルクに大賛成だ。もし新生児期の大変な時にあったら、どんなによかっただろうか。精神的にゆとりが持てたはずだ。冷静に考えれば、あらゆるものが便利になる時代に、なぜ粉ミルクしかなかったのか疑問だ。
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