液体ミルク解禁に「愛情不足」と筋違いな批判。苦労を押し付けて誰が幸せになるのか?

苦労しないと親になれないのか?

 しかし一部からは辛口な意見も出ている。批判の内容はこのような感じだ。 「手抜きだ」 「愛情不足で子どもがかわいそう」 「私たちの頃は、大変な思いをした」 「ネグレクトにつながる」  スマホ育児や手軽なベビーフードに対しても、しばしば不寛容な意見が寄せられる。「苦労して子育てして一人前」「親ならそれくらいの手間は覚悟しておくべき」と言わんばかりだ。  確かに、手がかかった経験、戸惑った経験が子どもへの思い入れを強めることはあると思う。筆者も「あの時の辛さがいい思い出になった」と感じることはある。  だが、苦労を美徳化し、その価値観を他人に押し付けるのはいかがなものだろうか。「自分が苦しんだからあなたも同じように苦しめ」という発想は、誰も幸せにしないと思うのだ。  子育てのしやすさは、子どもの体質、両親の年齢や体力、職業、家庭の経済力、実家の援助の有無など、家庭環境によって事情は異なる。ある人にできても、別の人ができるとは限らない。

親がリラックスして子どもに向き合う選択がベストだと思う

 ひとつの命を育てるのは生半可なことではない。親として感じる責任や緊張、生活の変化で気持ちのゆとりはあっという間になくなってしまう。  筆者の妻は長男出産後まもなく、プレッシャーから心身のバランスを崩した。妻に療養してもらいながら筆者が中心となって子育てをしたが、目の前のことに必死になりすぎて記憶が抜け落ちるくらいだった。 「離乳食は手づくりがいい」 「スマホやタブレットはダメ」 「母乳が一番に決まっている」  それらの意見をいちいち聞いていたら、頭がおかしくなる。  筆者はベビーフードをフル活用したし、スマホやテレビにたくさん頼った。周りが無責任に振りかざす正論に従った結果、子どもにイライラして接するより、リラックスして子どもに向き合う方がよほどいいと筆者は思う。  仕事ではスマホ、パソコン、家事では掃除ロボットや食洗機など、私たちの生活はさまざまな便利ツールが支えている。子育てでも同じことをしていいし、そうすべきだろう。  液体ミルクのような便利な商品が出てきたとき、「楽をしてダメだ!」と息巻くより、「いいものができたね!これで子育てが楽になるね!」と自然と言える社会になってほしいと願うばかりだ。 【文/薗部雄一】 1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会