ジョブズ型はもう古い?  相手の心理を誘導し、自分で決断させる説得術

 クライアントに対する商品の提案や、ソリューションの提案における説得には2種類ある。「外発的説得」と「内発的説得」だ。

ジョブズ型のプレゼンよりも効果的

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 1.外発的説得  2.内発的説得  上記の2つは一般的な用語ではないが、外発的説得とは、相手から一方的にプレゼンや説得を聞かされる形式の説得方法だ。  交渉相手を目の前にして、魅力的なフレーズやグラフを提示しながら練習を重ねたプレゼンを完璧にこなす。交渉される側は、舞台や映画を観ているような感覚だ。一方的に情報が伝えられ、その商品やソリューションに魅力を感じて、欲しいと思う。  このようなプレゼンには、淡々と情報を伝えるだけのプレゼンテーションに始まり、スティーブ・ジョブズのように、舞台上で一流の一人芝居を見ているように購買者を魅了するプレゼンなどがある。  スティーブ・ジョブズのプレゼンが注目を集めてから、淡々と正確な情報を伝えるだけのプレゼンよりも、言葉に質量と熱量のこもったプレゼンをする人が増えた。筆者が出会った、ほとんどの人の営業スタイルがこの「外発的説得」タイプだ。  しかし、筆者が出会う優秀な営業マンやプレゼンターは、外発的説得を行う人は少なく、むしろ「内発的説得」を行う人が多い。外発的説得では交渉する側が答えを提示する。一方で、内発的説得は交渉される側に答えを言わせる説得術だ。  これは、『コミットメントと一貫性』という心理作用を使っている。コミットメントと一貫性とは、自分が一度言ってしまったことに関して、その発言に責任を持ってしまい、発言に基づいた行動をしてしまうことだ。

相手の中に「気づき」を与えて決断させる

 たとえば、社内で意見が割れて決断に時間がかかっている問題があり、外部のコンサルタントを雇おうとしているクライアントがいるとしよう。外発的説得として、今すぐコンサル契約すべき理由をプレゼンするよりも、以下のように、相手にコンサル契約すべき理由を言ってもらうほうがよい。  相手「このままコンサル契約してもいいか少し不安なんです」  あなた「なるほど、少し不安なんですね。どういった点が不安なんですか?」  ※バックトラッキングをしながら、内発的説得を始める  相手「お願いしても、ちゃんと問題が解決するかわからないので……」  あなた「なるほど。不安になられている点は理解しました。ちなみに、我々と契約しない場合、今の問題はどうなります?」  相手「このまま、問題が解決できずにズルズル行って、期限を過ぎるか、中途半端な案を作ってしまうかもしれません。」  あなた「その内容で、決定権を持っている人を説得できますか?」  相手「いえ、できない可能性が高いです……」  あなた「だとすると、経験がある我々と一緒に解決策を考えたほうが、効果的ではないですか?」  相手「たしかに、そうかもしれません。」  イメージを持ってもらうためにスムーズにいった例を出したが、このように、相手のなかに気づきを与えたり、不安を生み出すことで、説得の成功率を高める手法を内発的説得という。
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