安倍政権の隠蔽体質に加担するメディア<菅野完氏>

森友学園

<撮影/織田曜一郎>

殺到した籠池氏への取材への違和感

 いったいこの人の元気はどこからくるのだろうか。  毎朝5時起床。神前仏前に手を合わせ、軽く朝餉をとったのち、犬の散歩へ。この日常のスケジュールを頑なに守りながら、籠池泰典氏は2月の最終週から3月初旬にかけ、精力的にメディア対応をこなし続けた。  御年66歳。一般的に考えれば、体力は下り坂に差し掛かった年齢だ。しかも籠池氏の場合、昨年秋まで300日以上にわたり大阪拘置所に長期拘留されていた。劣悪な環境は容赦無く体を痛めつけ、その後遺症ともいうべき身体的なダメージはいまも否応なく氏の体を痛めつけ続けている。  それでも約2週間にわたって連日、複数社、それぞれ2時間前後の取材対応をこなしていく。つまり、来る日も来る日も、最低6時間はカメラの前に座りインタビュワーの紋切り型の質問に答え続けるわけだ。持ち前のサービス精神と押し出しの強い喋り方は今も健在。相手の質問を捕まえて、的確に返答し、時には自説を滔々と主張するその声は精気に漲っており疲れを感じさせない。「言うべきことを言うチャンスがあれば、どんな相手でも話していきたい」と籠池氏は語る。その通りのことを籠池氏はやり続けた。  しかし、各社のインタビューが実りの多いものであったかといえば決してそうではない。考えてみれば当然ではあろう。今回、報道各社がこぞって籠池氏にマイクを向けたのは、氏が長期勾留された原因となった刑事事件の初公判が3月6日に行われるためだ。初公判を契機に改めて籠池泰典氏本人の声を拾おうというのである。  しかし、籠池氏に限らず、公判をひかえた被告人が、これから裁かれようという事件の詳細や公判の方針について、微に入り細にわたる回答などするはずがない。本人の利益に相反するからではなく、これから始まろうという裁判の内容を場外乱闘よろしくあちこちのメディアで当事者が語ることを、歓迎する法廷はなかろう。  したがって、籠池氏は、「初公判直前」との理由でインタビューをうけながら、「その裁判については詳しく語らない」という当然の対応をした。その対応の結果がどのようなものになるか、容易に想像できる。事実、報道各社が軒並み書き並べたインタビュー記事を見渡しても、新事実が提示された様子もなければ、新たな材料の発見があった様子もない。これまでどおりの籠池氏の主張が並ぶだけの代物しかない。

森友問題の「核心」と「枝葉末節」

 3月6日に初公判を迎えた籠池氏の裁判では、氏にかけられた二つの容疑が裁かれる。学校法人森友学園が、籠池氏が理事長を務めていた当時、大阪府からの経常費補助金をだまし取ったとされる容疑と、「瑞穂の国記念小学院」建設にあたり、国交省からの建築助成金をだまし取ったとされる容疑の2つだ。この容疑があればこそ、籠池氏は大阪地検に逮捕され長期勾留に伏された。しかし、冷静に容疑内容をみればわかるように、両容疑とも、森友問題の中核である「国有地不当廉売」に一切、なんの関わりもない。  籠池夫妻の強烈なキャラクター、塚本幼稚園で行われていた問題の多い教育内容、そして今回初公判を迎えた詐欺容疑などなど、森友問題は話題に事欠かない。だが、それらの話はそれぞれに大きな問題を孕んでいるとはいえ、「納税者の共有財産である国有地が不当廉売された」という最大の問題に比べれば、いわば枝葉末節にすぎない。  「他人事をいうてるみたいに聞こえるかもしれんけども、国有地の話をやるのが、本来の話でしょ。国会で議論せなあかんのもその話でしょう。僕のこの件ではないはずや。僕が逮捕され長期間、拘置所に入れられたのは、その話から目をそらせるためとしか思えん。そやから、国策捜査というんです」  初公判前後にうち続いたメディアからのインタビューで、籠池氏がこの種の発言を繰り返したのも、「本件詐欺容疑は森友問題の枝葉末節に過ぎない」ということを彼なりに表現したものなのだろう。  しかし、メディアはその枝葉末節に蝟集し、枝葉末節の話ばかり書き立てお祭り騒ぎにしたてていく。結果として、籠池氏にかけられた詐欺容疑の初公判だった3月6日のテレビも新聞も、籠池氏のインタビューと偶然にも同日に重なったカルロスゴーン氏の保釈のニュースで埋め尽くされる結果となった。
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「核心」を報じぬメディアの罪
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