「お前が悪い」。モラ夫の支配・従属の強要で妻は「夫源病」に追い込まれる<モラ夫バスターな日々4>

 モラハラとは何か。モラ夫とはどんな夫だろうか。以下、数回にわけて説明する。  モラハラがなぜ生じるかは、後日、再度論じるが、ここでは弁護士である私、大貫憲介が実務上の経験から得た結論を述べる。

日本人男性に埋め込まれた社会的文化的規範

 日本には、夫を家長とする社会的文化的規範(群)が存在している。(文化的規範として生き残った)明治民法下のイエ制度、男尊女卑、性別役割分担、良妻賢母主義などがその中核である。これらの規範は、日本の男性の心理に深く内在化している。  多くの日本男性は、意識的/無意識的に、これらの規範により行動している。そして、家庭にあっては、彼らは、それが社会的に許されていると考え、支配者(家長)として振る舞うのである。それらの多くは、率直に言って、横暴な振る舞いであり、妻に対するモラハラと評価するべきものである。  男性から見ると、社会的に許容されているはずであり、「そんなの普通だろ」「当たり前だろ」「最近の女はわがまま」「我慢を知らない」という反応が多くもたらされ、モラ夫たちが反省することは稀である。  また、社会的文化的規範を背景にしているため、モラ夫たちの言動は驚くほど類似しており、どこかにモラ夫の学校があると妄想させるほどである。否、モラ夫の学校は存在する。それは、日本社会そのものである。

モラ夫の定義と分類

 以上の理解を前提に、私は、「モラ夫」を「男尊女卑を背景として、妻に対する支配を確立しようとする夫」と定義している。そして、モラ夫による「モラハラ」とは、「妻に対する支配確立、維持、拡大のためにする、モラ夫の一連の言動、ないし、一連の言動の一部」と定義する。  モラハラには、「ハードモラ」と「ソフトモラ」がある。  ハードモラとは、暴言の内容や態様が酷く、被害妻や周囲が容易にモラハラと認識できる態様のモラハラである。怒鳴り散らす、日常的にけなすなどが典型例である。  ソフトモラとは、表面的な言葉遣い、内容や態様自体は、ハラスメントといえるかどうか微妙であるものの、支配確立の意図を伴うことにより、毒性を帯びるモラハラである。  内容、態様が表面的には穏やかなだけに、被害妻や周囲には、モラハラとして認識されにくい。しかし、妻に害を及ぼす「毒性」においては、ハードモラを上回ることすらある。  ソフトモラの例としては、「うちで働いて稼いでいるのは誰かな?」「なぜ、そこの隅に埃があるのかな?」などと質問して、妻を追い詰める、質問モラなどがある。
次のページ
「味噌汁がぬるい」と怒った次の日に「こんなに熱い味噌汁が飲めるか」
1
2
3
ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会