「お前が悪い」。モラ夫の支配・従属の強要で妻は「夫源病」に追い込まれる<モラ夫バスターな日々4>

支配従属の強調/確立

 モラハラは、モラ夫が家長/支配者の地位に就いたと確信したときに始まる。その確信は、結婚、第1子・第2子出産、マイホーム購入など「引き返せない」節目や夫の昇進など地位の向上時に生じる。私はこれをモラスイッチと呼んでいる。  さて、モラハラは、モラ夫=家長/支配者である根拠の強調から始まることが多い。「俺が稼いでる」「誰のおかげで食えるんだ」「俺は苦労している」「俺がこの家の主(あるじ)だ」「俺に逆らうのか」などがこれに該当する。  妻に対して、妻=能力の劣る従属者であることの確認的な表現が繰り返されることも多い。「お前はバカ(アホ)だ」「何もわかっていない」「俺がいないと生きていけない」「俺が指導してやる」「俺と同じだけ稼いでから(意見を)言え」などがこれに該当する。

「味噌汁がぬるい」と怒った次の日に「こんなに熱い味噌汁が飲めるか」

 モラ夫は、モラハラにより、妻の思考能力を奪っていく。  よくある手法は、怒る、怒鳴るなどである。しかも、突然怒る、すなわち、キレるのが効果的である。成人男性が、突然切れて怒り出せば、間違いなく迫力があり、気丈な女性であっても、怖いと思うはずだ。そして、怒ることの是非をおいて、妻は、夫を怒らせないように気遣うようになる。  同じ理由で怒るときは、「何度言ったらわかるんだ」と責めて妻に罪悪感を植え付ける。  他方、怒る理由がその都度矛盾するのも効果的だ。例えば、ある日、「味噌汁がぬるい」と怒り、別の日は「こんなに熱い味噌汁が飲めるか」と矛盾した理由で怒る。  突然キレられ、都度怒る理由が違うと、妻は混乱し、いつ怒られるか怯えるようになる。怖さと責め立てられて生じた自責の念から、モラ夫のご機嫌をうかがい、怒られないように先回りして、モラ夫の要求に応えようとする。  これが繰り返されると、モラ夫の要求・思考が妻の心理に内在化し、妻の行動、思考をコントロールするようになる。私は、これを「脳内モラ夫」と呼んでいる。脳内モラ夫が確立すると、例えば、スーパーで買い物しようとすると、「それ本当に必要か」「そんなに高いものを買うのか」という「夫の声」が聞こえたりするという。  こうして、妻は、「夫の怒り」を心底怖れ、「夫が怒るかどうか」を基準として行動するようになり、支配従属関係が確立する。  多くのモラ夫は、怒り過ぎであることを認識しているのだろう、自ら理不尽に怒っておきながら、「怒らすお前が悪い」と責任転嫁することも忘れない。
次のページ
深夜に始まる、長時間の説教
1
2
3
ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会