事件そのものや犯人のマニフェストだけでなく、社会的な反応もニュースを賑わせている。日本でも広く報じられている「卵投げ事件」もそのひとつ。『ローリング・ストーン』は「
オーストラリアのティーンが右翼政治家に卵を投げる動画が拡散」という記事を掲載している。
同記事はイギリスのベテランロックバンド、ザ・フーの代表曲『ザ・キッズ・アー・オールライト』を引用した見出しを掲げ、卵をぶつけられた政治家フレイザー・アニング議員の主張を紹介している。
「こういった自警行為は決して許されないが、この事件は我々のコミュニティで増長している恐怖を浮き彫りにしている。オーストラリアとニュージーランドで増えるムスリムの存在だ。ニュージーランドの路上で起きた惨劇の真の原因は移民政策で、そもそもムスリムの狂信者をニュージーランドに移住させたことが問題だ」
このアニング議員の暴論に反応したのは、卵を投げた少年だけではない。オーストラリアのスコット・モリソン首相も、「ニュージーランドの暴力的、右翼的、原理主義的テロリストの襲撃を移民政策のせいだと非難するのはおぞましい」と断言している。
また、人気ミュージシャンのトム・モレロも自身のかつてのバンド名を引き合いに出し、「
エッグ・アゲインスト・ザ・マシーン」と少年への支持を表明している。
インターネット上でも、「卵をぶつけるのはどうなの……?」と、「喧嘩両成敗」や「両論併記」に偏るのではなく、
悪いのはヘイトを煽る政治家のほうであると明言した反応がほとんどだ。署名サイト『Change.org』には、「
フレイザー・アニングを議会から排除しよう」というページも登場。多くの署名が寄せられている。
今回の事件では、事件が起きたニュージーランドのジャシンダ・アーデーン首相の対応も注目されている。たとえば『ガーディアン』には「
思いやり、愛と高潔さ ジャシンダ・アーデーンが世界に真のリーダーシップとは何かを示す」という記事が。
アーデーン首相は38歳という同国最年少の首長で、これまでも執務室で出産をしたことや、国連の会合に赤ん坊を連れていったことが注目されてきたという。セレブのような扱いを受けてきたアーデーン首相だが、同記事は今回の事件への対応で、彼女の資質が表れていると綴っている。
事件後、アーデーン首相は
「They are us」とムスリム住民もニュージーランド国民であることを強調。すぐに銃規制の強化を約束し、遺族の葬儀費用を負担することや事件で影響を受けた人々への経済的援助を保障するとした。また、ヒジャブをまとい、イスラム教の指導者たちと抱きしめあった姿も同記事で賞賛を浴びている。
“ドナルド・トランプの右翼テロリズムは増長していないという主張に賛同するかという直接的な質問に対し、彼女は明確に回答した。「いいえ」。合衆国はどう援助することができるか?(との問いには) 「すべてのムスリム共同体への思いやりと愛情です」(と答えた)”
今回の銃撃事件がヘイトクライムであると断言し、移民に対しての規制強化ではなく、国際的な理解が必要だと主張するアーデーン首相には、国内外から賛同の声が挙がっている。