2月24日、脱炭素化国家計画を発表するアルバラード大統領
ついに、「持続可能国家」プロジェクトが始動した。
3月中旬、コスタリカのカルロス・アルバラード大統領は米国を訪問し、アマゾンやグーグルなどのいわゆる「GAFA」を含む名だたる大手企業の役員と懇談した。実はこれは、アルバラード政権が打った「持続可能国家」へのしたたかな布石だった。
これに先立つこと約2週間、コスタリカ政府は2月24日、「脱炭素化国家計画2018-2050」(Plan Nacional de Descarbonización=PND)の概要を発表した。経済・社会の脱炭素化に関するロードマップを発表し、「持続可能国家」への計画がついに始動した。
コスタリカがオングリッド電力のほとんどを、核分裂も化石燃料の燃焼も伴わないクリーンエネルギーで賄っていることは、すでに広く知られている。
しかし、国内のエネルギー消費全体で見ると、その過半を化石燃料に頼っている。そこでアルバラード政権は、脱炭素化経済の方向性に関して将来達成すべき10の目標を示した。
環境エネルギー省が発表した資料をまとめると、それらの目標は以下の項目で構成されている。
1. 公共交通システムの脱炭素化
2. 自家用車のゼロ・エミッション化、シェアライド産業の推進、充電・水素ステーションなどのインフラ整備
3. 貨物車両の低炭素化
4. 競争力を備えた再生可能エネルギーのみによる電力マトリックスの構築
5. 建築物の低炭素化
6. 産業セクターの近代化を通じた持続可能化
7. 廃棄物の分別、再利用、再評価および廃棄の統合的管理システムの構築
8. 国内消費用および輸出用の食糧生産の低カーボン化
9. 牧畜業における温室効果ガスの逓減
10. 生物多様性の保護、森林率の向上と維持、都市・地方・海岸地域で自然のエコシステムに沿った管理モデルの確立
カーボン・ニュートラルの先にある「脱炭素化経済」を目指す道筋
これを見て分かるのは、運輸セクター、特に自家用車と貨物運輸の扱いに苦慮していることだ。
そもそも、コスタリカの輸送はほぼトラックに依存している。加えて、大陸間の貨物トラック輸送ルートもあるため、自国のみで規制しても完全には規制しきれない問題もある。
そこで運輸部門の低炭素化対策は、鉄道の敷設(復活)と電化→バス・タクシーのゼロ・エミッション化(大型車両は水素車、普通車両はEVが中心だと考えられる)→一般車両のゼロ・エミッション化→貨物車両の低炭素化という段階を経る、と同計画は読める。
ただ、貨物車両をどう低炭素化していくかという方法論はまだ具体的ではなく、これからの議論が重要になってくるだろう。
また、10の目標のうち9つまでが、炭素排出を減らす取り組みであり、炭素を吸収するための目標は1つしか挙げられていないことには「炭素の排出・吸収のプラスマイナスをゼロにする」といういわゆるカーボン・ニュートラルに満足することなく、炭素の絶対排出量そのものを減らしていくという意気込みが感じられる。