増加する日本人出張者や駐在員によるセクハラ事例。「輸出」される日本の恥

写真はイメージです 写真/ピクスタ

 近年、日本ではセクシュアルハラスメントに対する取り組みが進み、告発されれば高級官僚であってもすぐにクビが飛ぶ時代に。しかし、目の届かない海外ではいまだセクハラが蔓延していた

セクハラやジェンダー犯罪に抗議するアルゼンチンの女性たち。世界的潮流を学ぶべきだ AFP=時事

日本ではできないが、海外なら大丈夫!?

「日本人は真面目で正義感が強い人ばかりだと思ってたのに……」  そうこぼすのは、ホーチミン在住のベトナム人女性・Kさん(25歳)。大学の日本語学科を卒業後、憧れだった日本のアパレル会社の現地法人に就職したのだが……。 「入社して間もなく、親会社から頻繁に来ていた40代の男性の地方視察に通訳として同行させられたのです。いきなりの大役に胸を躍らせていたのですが、2人きりの泊まりがけの視察では夜にバーに連れていかれ、飲めないお酒を飲まされた。酔って手をつないできたりして辛かったんですが、私たちにとって親会社の社員は神様のような存在で何も言えなかった。そして5回目の地方視察。いつものようにお酒を飲まされて深夜にホテルに帰ると、しばらくして隣の部屋からコネクティングドアを開けて入ってきた。恐怖のあまりバスルームに逃げ込み、鍵をかけて朝まで過ごしました」  翌朝、ホテルを脱出したKさんは、現地法人の日本人社長に報告。すると「そんなのは日本式飲みニケーションだよ」と取り合ってくれなかったばかりか、その後も視察の同行を続けるよう言われた。ほどなく絶望したKさんは辞職したが、このアパレル会社は皮肉にも“自立した女性のライフスタイル”を提案するブランドも展開しているというからあきれる。  一方、タイ・バンコクにある日本の物流会社の支社にも、セクハラおやじとして悪名を馳せる中年男性がいる。同社の元現地採用社員の男性は言う。 「バンコク支社に5年以上いる50代の男性支店長です。彼は現地採用の権限を一手に担っており、女性社員は自分の好みで選んでいる。結果、この支社のタイ人スタッフは色白で背の高いコばかりです。日本語がわからない女性社員に下ネタを言ったり、別の意味だと騙して卑猥な言葉を言わせたりといったセクハラは日常茶飯事。さらに、うち4~5人を『美女軍団』と呼んで、取引先との会食に接待要員として同席させています。横に侍らせてお酌をさせるのはもちろん、AKB48など日本の歌と踊りを覚えさせて披露させたりとやりたい放題です。現地女性社員の離職率が高く、セクハラの噂も本社に伝わっているはずですが、支社の売り上げ成績がいいので、彼の職が解かれることはない」

イスラム教国でもお構いなしな日本人セクハラ中年男性

 傍若無人な日本のセクハラおやじはイスラム教国でもお構いなしだ。現地の日系旅行会社に勤める日本人男性はこう話す。 「1年ほど前、日系大手の電子メーカーから来た視察団のアテンドに送られた20代のマレーシア人女性から泣きながら電話があった。夕食の席で出張者のひとりが半裸になり、彼女の手を取って無理やりに踊り始めたそうなんです。後日、当人に問いただしたら『泣く意味が不明。雰囲気が台無しになった』と逆ギレされました。本社にも厳重にクレームを入れましたが誠意ある対応はなかった」  日本の本社の対応もまだまだ不十分だ。「職場のハラスメント研究所」代表で、労働ジャーナリストの金子雅臣氏はこう話す。 「近年、国内のセクハラに関して言うと大手企業では8~9割の企業がセクハラ相談窓口を設けるなどして対策が取られるようになった。しかし、現状は上司と部下・同僚同士など社員同士のセクハラ問題への対応だけで手いっぱい。取引先や子会社など、組織の外のセクハラ問題は放置されている。組織外のセクハラは、往々にして発注側が受注側の社員に、親会社社員が子会社の社員に対して行われる。出張者や駐在員が海外支社や現地法人の社員に対して行うセクハラも同じことがいえます」  ’18年の日本のジェンダーギャップ指数は世界で110位だが、後進国だと思っている多くの国は日本より順位が上だと金子氏は指摘する。セクハラに対する考え方も日本は後れをとっているのだ。
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