現在の羽田空港では、飛行機は「海から入って海に出る」。写真は東京湾の上を飛ぶ着陸便
3月8日、東京都大田区議会で「『羽田空港増便』に必要な、国との協議は行われているのか?」との質疑が出た。質問に立ったのは奈須りえ議員(フェアな民主主義)だ。
国は来年の東京オリンピック開催までに外国人観光客を4000万人に増やすことを表明している。その実現に必要なのが、成田空港と羽田空港での飛行機の増便だ。ところが、その増便のためには、現在の羽田空港の離発着の基本ルートである「海(東京湾)から入って海に出る」に加えて「陸(都心)から入って陸に出る」という新ルートを設定しなければならない。
ところが、その新ルートを設定するためには、国と大田区との間で「協議をする」との覚書がある。ところが、国が新ルートを公表した2014年から今に至るまで、その協議の痕跡がない。もし国が大田区と協議をしていなかったとすれば、国は、覚書を無視のまま新ルート策定に突っ走っていたことになる。ここを奈須議員は突いたのだ。
新ルートでは、品川駅近くの高層マンションのすぐ上を飛行機は飛んでいく。高層階になるほど騒音に悩まされる
新ルートとは、大ざっぱにいえば「南風」が吹く「15時から19時の4時間のうちの3時間」に限り、飛行機は埼玉県から南下して以下の地域の上空を低空飛行しながら羽田空港に向かう。
東京都北区では高度約1200メートルを飛び(騒音は大型機で70デシベル(db)弱)、新宿区で900メートル(同70db)、渋谷区で750メートル(72db)、港区で450メートル(76db)、品川区では300メートル以下(同80db)と東京タワーよりも低くなり、最後の羽田空港を有する大田区では150メートル以下(同80db以上)まで高度を下げ、A滑走路に1時間14本、C滑走路に30本が着陸する。つまり、1日のうち3時間で132便が着陸のために都心を低空飛行する。
次に「陸に出る」新ルートだが、これは2つある。
「南風」時の同じ時間帯でB滑走路から1時間に20便が離陸し、川崎コンビナート上空を通過して海に抜けるルート。そして「北風」時、「7時から11時半の4時間半」と「15時から19時の4時間のうちの3時間」に、C滑走路から1時間に22便が江東区や江戸川区の上空を通って北上するルートだ。
この計画の概要が2014年に明らかになると、新ルート直下では低空飛行に不安の声をあげ反対運動を展開する市民団体が各地で設立された。当然だ。70dbとは、1メートル以内でやっと大声の会話ができるレベル、80dbはパチンコ店内並みの騒音だ。この騒音のなかで生活することは住民には耐え難い。