「Google+」終了。多くの負け戦を経験しているGoogle、撤退の歴史

Google+トップページ

「Google+」トップにはまだ終了の告知がないが……。夢中になって消えたら悲しい……(Google+トップページより)

GAFAとして世界を支配する企業の1つ「Google」

「GAFA」という言葉をご存じだろうか。世界的なアメリカのIT企業「Google」「Amazon.com」「Facebook」「Apple Inc.」の頭文字を取った言葉だ。これらの会社は、巨大なプラットフォームを有し、膨大な量の個人情報を収集、活用して、多くの事業をおこなっている。  そのGAFAの一角のGoogleは、検索エンジンで名を挙げ、AdWordsでネット広告の中心的存在になった。そして、多くの事業に参入して、Gmail、Android、Youtube、Googleマップ、Googleドライブなど、多数のサービスで大きなシェアを獲得している。  数多くの事業を買収して、次々とサービスを提供しているGoogleは、2019年の4月2日に「Google+」というSNSというサービスの一般向け利用を終了する。この「Google+」について、少し書いてみることにする。

鳴り物入りで始めたSNS「Google+」が4月2日に終了

「Google+」というGoogleのサービスは、2011年の6月28日に発表された。発表直後は招待制による運用をして、同年9月21日に一般公開されて、全ての人が登録可能になった。  少し時間を遡る。Facebookの創業は2004年。2009年には世界最大規模のSNSサイトになる。2010年にはアクティブユーザーが全世界で5億人を突破。同年には、Facebookを描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」が公開されてヒットする。「Google+」が開始されたのは、その翌年である。  外部から見てこの「Google+」というサービスは、SNS時代へのGoogleの必死の追随に見えた。当時、私の観測範囲では、Googleが検索エンジンの価値や、AdWordsの収益を守るために始めたのだろうと噂された。SNSによって公開されない情報が増えれば、検索エンジンで探せない情報が多くなる。また、個人に直接リーチする手段を持つSNSがネット広告の中心になれば、Googleの広告事業は力を失う。  そうした噂とともに、「Google+は失敗するのではないか」という声もささやかれた。外部からの印象として、Googleはアルゴリズムや技術でもって物事を解決するのは得意だが、対人能力は低いと見なされていたからだ。コミュニケーションを中心としたプロダクトは、どちらかというと弱いという評価を多く目にした。  だがGoogleは、なりふり構わない強引な連携で「Google+」を推進した。たとえば、「YouTube」の動画にコメントする場合に「Google+」のアカウントを必須にする。Googleアカウントの新規作成時に、「Google+」のプロフィール作成を求める。後に撤回されたこうした強引な連携は、かなり嫌われた。それでも「Google+」の推進には大きく役立っただろう。  しかしGoogleは、大きな労力を掛けた「Google+」を最終的に終了すると決めた。2018年10月8日に、一般ユーザー向けのサービスを2019年8月に終了すると発表した。利用率の低下や、セキュリティ上の問題などが理由である。  その後、セキュリティ上の理由から、一般ユーザー向けサービスの終了日を2019年4月2日に前倒しした。鳴り物入りで始めたSNSサービスは、火事場の火消しのように慌ただしく終了することになった。
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