世界のウチナーンチュが、ウチナーンチュであることを誇りに思えるように
玉城デニー知事との面談後に取材に応じるロバート・カジワラさん
2人は改めて固い握手を交わし、カジワラさんは「ちょっと、おみやげです」と日本語で話した。
「私のCD。私は作曲家でミュージシャンです。これは今回の旅のために作ったCDです。沖縄のことを思ってこの曲を作りました。署名もそうですが、音楽、映画、アートなどの力を使って、沖縄を助けたい。知事もまたミュージシャンということを聞きました。ぜひ楽しんでいただけるとうれしいです」(カジワラさん)
玉城知事はCDのラベルを見つめて「ありがとうございます」と言った後、突然英語で「一つ聞きたい。あなたは“ヌブイクドゥチ”(沖縄の有名な古典楽曲)に影響を受けた曲も作曲しますか」と聞いた。
カジワラさんは「もちろんです。“ヌブイクドゥチ”など、私が影響を受けた曲からアレンジを加えて作っています。このCDは4曲の短いものなのですが、今後も琉球音楽のテイストをさらに加えて作っていきたいと思っています。沖縄の伝統的な音楽も大事にしながら、沖縄の新しい音楽を創出して、共有していきたいと思っています」と話した。
知事は「音楽というのは、バイブレーションですよね。壁も何もない。全部乗り越えていくんですよね」と述べ、カジワラさんは「その通りですね。これは沖縄のルネッサンスだと私はとらえていて、世界のウチナーンチュが、ウチナーンチュであることを誇りに思うようにしたいと思っています」と答えた。
沖縄の文化を知ることで、基地問題だけではなく沖縄の尊厳にも関心を
沖縄県庁知事応接室で面談する玉城知事とカジワラさん
玉城知事の父は米国人の元海兵隊員で、母はウチナーンチュという、2つのルーツを持っている。「こういうダイバーシティ(多様性)が今、世界で当たり前になっている時代になっている」と玉城知事は指摘した。
「2つの国のルーツを持つ私でも、沖縄県のリーダーとして仕事を任される時代になっている。これからはあらゆることを乗り越えて協力していく。そういうようにすれば、若い人たちはもっとその力を発揮してくれると私は考えています。
その気持ちに、例えば楽器を弾いたり、踊りを踊ったり、そういうムーブメントが加わると、もっと勢いをつけていくんじゃないかなと思っています」(玉城知事)
「世界の若いウチナーンチュが、豊かな舞踊や伝統文化、ポップ文化など沖縄の文化を知っていくと、沖縄をもさらに理解することになります。文化を知れば、彼らはただの政治的な基地の部分だけではなく、沖縄の尊厳について深く関心を持つようになるのではないでしょうか。
私は、沖縄のことを学んだ人たちは、沖縄をサポートしてくれるということがわかりました。この基地が、沖縄の人たちだけではなくすべての人たちにとって利益がないということも理解してもらえると思っています。
だから私は知事とともに沖縄を助けていきたいし、知事とともに辺野古の新基地建設を止めることに力を注いでいきたいです。今日はありがとうございました」
知事は「ぜひ、よろしくお願いいたします。今度は、ハワイでお会いしましょう」と述べ、記念撮影をして面談を終えた。
<文・写真/浅野健一(アカデミックジャーナリスト、元共同通信記者・元同志社大学大学院メディア学専攻教授)>