「合意なし」と報道された米朝首脳会談の、現場で見た意外な「進展」

日米メディアは「合意なし」に喜び、韓国メディアは落胆

メリアホテル前

金正恩委員長がチェックインしたメリアホテル前に集まる報道陣

 トランプ大統領はハノイ入りの前、ツイッターなどで「驚くほど生産的な首脳会談になる」とコメント。そのため、朝鮮側が非核化の具体的プロセスを示し、米国側が朝鮮戦争の終結宣言と国連の制裁の解除への道筋を示す「ハノイ宣言」が発表されるとの期待が強まっていた。  世界各地から3000人近い報道関係者が集まったベトナムの首都・ハノイの国際メディアセンターでは、会談を前に「北のペース」などと揶揄してきた日米の記者たちが「そうはうまくいかない」と受け止めた一方、ホスト国のベトナム、ロシア、中東などの記者たちの表情は硬かった。 「トランプ氏の前のめり」を懸念してきた日本の記者クラブメディアの報道従事者たちは、「合意なし」に驚きながらも、喜びを隠していない。テレビのキー局は報道部員だけでなく、情報番組ごとに取材者を派遣しているが、「北は信用できない」「もう日本に帰るぞ」などと言っている。「トランプ外交の大失態だ」というワシントン支局特派員もいた。トランプ嫌いの米国メディアの多くも「無理な話だった」「驚きはしなかった」と受け止めた。  一方、プレスセンターの中に「韓国プレスセンター」を設置して、最大の取材陣を送り込んでいる韓国の報道機関の記者たちは、重苦しい雰囲気で原稿を書き、今後の見通しを議論している。地元のベトナム、東南アジア、アラブの記者たちの多くも「残念な結果だ」と言っていた。  アルジャジーラ(カタール)の特派員は「トランプ大統領は商売の取引は得意だが、外交での交渉では素人ではないか。金委員長が大統領への信頼を失うのではないか」と懸念していた。

トランプ大統領「核実験、ミサイル発射実験がないことは成果だ」

国際メディアセンター

国際メディアセンターのワーキングルーム前に立つ筆者

 ハノイ宣言が発表され、朝鮮戦争の終戦へ向けた何らかの合意があると期待していた筆者には予想外の展開だ。しかし、午後2時16分から宿泊先のマリオットホテルで会見したトランプ氏は、今後も対話を続けると表明。ポンペオ国務長官も、「今回は朝鮮側の準備の時間が十分になかった」と表明し、対話の継続を確認している。  今回の会談で、米国が平壌に連絡事務所を設置する提案があり、トランプ氏が「いい考えだ」と応じたとされるが、日本の民放記者たちは「連絡事務所というが、大使館、領事部でもないので、単なる連絡窓口だ」と、東京のデスクと会話していた。  連絡事務所は、そんなに軽いものではない。欧州連合(EU)は平壌に大使館を置いているが、フランスだけは連絡事務所を置いている。日本の与野党議員の中にも、平壌に連絡事務所を置くべきだという意見がある。  1948年から71年続く朝米の敵対関係を友好な関係に変えるには、時間がかかる。1953年に停戦協定が結ばれた朝鮮戦争を終わらせるのも簡単ではない。2017年末まであった朝鮮半島での核戦争の危機が、現実に今なくなっている。  トランプ大統領は「急がない」「核実験、ミサイル発射実験がないことは成果だ」と言っている。外国メディアは「非核化は、米国の核の傘の下にある韓国、日本の核をどうするかも課題」だと報じている。
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「ハノイ」で行われたことの意義
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