2月26日の講演会は、前半が、山本氏の政治活動を描いたドキュメンタリー映画『BEYOND THE WAVES』(アラン・ドゥ・アルー監督)の上映会。後半が、約2時間にわたって山本氏が会場との間で政治や政策について質疑を行うという構成だ。
午後7時10分頃から始まった質疑で山本氏は、フロアからの質問や話題提供を受ける形で貧困対策や経済政策を語り、安倍政権を批判した。特に消費税をめぐっては、消費税の減税や撤廃ではなく税率の凍結を主張する野党の戦略も批判し、野党に消費税減税を政策とすることを求める署名活動を呼びかけた。
クライマックスは、質疑の残り20分というタイミングで唐突に訪れた。フロアの男性のこの質問。
「山本太郎さんは日本母親連盟から選挙に出るんですか」
山本氏が「日本母親連盟に入られている方、どれくらいおられますか」と問いかけると、ほぼ満員となった定員270席の会場では来場者の3~4割が挙手。半数以上が、会員ではない人々だ。
「お話を聞きたいと言われる方は、スケジュールが合えば行きます。考え方が違う人とでも話はしようと思います。ですが、いまお尋ねがあったのは、選挙も一緒にやるんですかということなんですが、(日本母親連盟と)
選挙を一緒にやるというのは難しいなというのが私の見解です」(山本氏)
山本氏は、もともとこの講演で日本母親連盟について話すつもりでいたようだ。
「日本母親連盟と山本太郎の考え方の相違」
そんなタイトルがスクリーンに映し出される。続いて、こんな文章が前提として示される。
「
政治的な主張や思想信条等は、いかなるものであっても、個人の自由。たとえ、それが論理的な矛盾、非科学的なものであっても、究極的には『それを信じる』ことは自由。それ自体を批判しているわけではなく、個人を攻撃する意図はありませんという前提条件を最初にご了解下さい」
ここから、日本母親連盟が掲げる政策や関係者の発言などを具体的に指摘し批判する、怒涛のスライドショーが始まる。
「(『原発稼働ゼロおよび原発廃炉の推進』という政策は)これだけ読めば山本の考えとズレはないと思うんですけども、一方で、今年2月の母親連盟神奈川県支部の発足集会で母親連盟の顧問(杉田穂高氏=歯科医)の発言を見てみると、こうです」
スライドで、その発言が映し出される。
〈311福島大震災、あれはやられたんです。(略)福島からはるか離れた海洋上にいた空母があるんです。アメリカの。個々の乗組員もすごく被爆して、みんなガンになってるんです。(略)海底に核爆発を起こして、みんな被曝したから〉
これについて山本氏は、東日本震災の震源が宮城県の東南東130km付近であり、地震発生時にその空母(ロナルド・レーガン)がいた位置が日本の東方約1500キロの西太平洋だったことを指摘。
「ちょっと、話がよくわかんないといいますか……」(山本氏)
ここで再び、先程の前提条件を読み上げる山本氏。
「政治的な主張や思想信条等は、いかなるものであっても、個人の自由。たとえ、それが論理的な矛盾、非科学的なものであっても、究極的には『それを信じる』ことは自由(以下略)。けれども、そういう方が顧問にいるところと一緒に選挙をやるというのは、なかなか考えづらい」
次に、母親連盟の顧問ではないが、顧問である人(内海聡氏)を応援している由井寅子氏の発言が紹介される。
〈放射能に対してどのように振る舞うべきなのかが、理解されるでしょう。(略)放射能を信頼することです。(略)そしてその自信の中で病原体や放射能に負けない免疫力を取り戻すことができるのです。そしてそのときに病原体がその存在意義を失い消滅するように、原発も核兵器も消滅していくと思うのです。(略)〉
「なんか信仰か何かなのかなあと一瞬、思っちゃうんですね。これ、安倍昭恵さんとも同じような主張なんですよね」(山本氏)
安倍昭恵氏のFacebook投稿が紹介される。
〈私は放射能に感謝の気持ちを送ります。ありがとう・・・〉
会場からは笑い声。
「考え方は自由なんですよ」(山本氏)
話は由井寅子氏に戻る。病気の原因とされる物質を極限まで希釈した水を砂糖玉(レメディー)にたらし、それを飲むことで病気が治るとするホメオパシーの主張を山本氏が説明。由井氏が代表を務めるホメオパシー医学協会のウェブサイトにある由井氏の文章が示される。
〈今回の原発事故は私たち日本人が敗戦と共に失ってしまった民族の誇りと愛国心を取り戻す大きなチャンスでもあるのです。そのためにはウラニウムのレメディーとプルトニウムのレメディーが必要でありホメオパシーは必要なのです〉
「で、実際にこの由井さんの団体が商品化されているものが、
福島の土を採取して作られたホメオパシーレメディなんですね。それって、まあ、いいんですけどね。選びたい人は選んで、選びたくない人は選ばないっていうのはアリなんですけど、ちょっと理解に苦しむ部分があるなというのが、私の気持ちです。で、この母連の代表の阪田(浩子)さんという方と東京支部長も、由井寅子氏に協力を仰いでいたと」(山本氏)
母親連盟東京支部長のブログが示される。
〈ホメオパシーの基本キットが全国に行き渡るように…というのが、寅子先生の願いです。私たちも賛成!〉
「政治的な主張や思想信条等は、いかなるものであっても、個人の自由。たとえ、それが論理的な矛盾、非科学的なものであっても、究極的には『それを信じる』ことは自由(以下略)」(山本氏)