手と目、脳を使ってまとめれば、自分なりの判断基準ができる
なんと面倒でアナログな作業をやるものかと、あきれる読者の方もいらっしゃるでしょう。しかしこの手作業による記入を億劫がらずにやることで、必要な日米株価の動きを、手と目、脳を使い、確実に把握することが可能になります。慣れればほんの数分で済む作業です。手帳を見栄えのあるようにするため、サインペンの色などはお好きな色を選んでください。
1か月が終わった段階で、記入した手帳を見てピンクの多かった日は、その月の前半だったのか中頃だったのか、それとも後半だったのかが分かります。後半にピンクが少なく、黄色が多ければ、翌月も低水準で始まるだろう、逆にピンクが多ければ翌月も上昇で始まる公算が大きいなどと自分なりの判断が可能になります。
1年が終わり、記入した手帳を振り返ってみると、1年のうちどの月に株価が上昇し、どの月が不振だったかも分かります。株価にはかなりの季節性があるので、記入することで自分なりに確認し、翌年の石橋攻略の参考にしてください。
私の場合は、毎朝テレビ東京の「ニュースモーニングサテライト」(モーサテ)(5時45分放送開始)を朝6時過ぎに起きて見ながら、終わったばかりの
NY市場のダウの終値、前日比、シカゴ日経平均先物、NYでの円ドル相場を手帳に記入します。
これらの数値を見ながら株式専門家の「今日の東京市場の株価の見通し」などを参考に、数時間後に始まる東京市場での日経平均の寄り付きを予想します。専門家の見通しに対して「その通り」と思うこともあれば、「少し違うのではないか」と感じることもあります。最終的には自分の判断で数時間後に始まる東京市場の動きを判断します。
この数年、東京市場の株価はNY市場の動向に過剰反応して始まります。特に取引開始後30分ほどはその傾向が顕著です。寄り付きが前日比3桁以上の大幅上昇が期待できれば、手持ちの株式売却のチャンスになるかもしれません。逆に大幅下落が予想されれば、押し目買いのチャンスかもしれません。テレビ東京の「今日の株価見通し」を聞き、必要なNY市場の情報を手帳に記入する時間は数分で済みます。
記入が終われば朝の仕事はこれで終わりです。私は立ち上がって体の屈伸運動をしたり、数回深呼吸をしたりしてリラックスします。6時半から始まるラジオ体操をすることもあります。
そして朝9時から東京市場が始まります。取引開始後30分が最初の勝負で、売買取引はこの時間帯に成立する確率はかなり高まっています。10時頃までパソコンに表示される株価の変化を見届けて、利益確定、押し目買いなどの商いをして今日の取引は終わりです。
外出など予定がある人はお出かけください。特に外出などの予定がなく1日家にいる場合は、後場(ごば)の寄り付き(正午12時半)から30分程度、さらに後場が終わる30分前の午後2時半頃から株価の動きを見てください。
午前の寄り付き時間ほどではありませんが、利益確定ができるチャンスがあります。そして取引が終わった
午後3時以降に、日経平均の終値、前日比、3時頃のドル円相場を記入してください。
◆石橋叩きのネット株投資術 第29回
<文/三橋規宏>
みつはしただひろ●1940年生まれ。1964年慶応義塾大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学教授、同大学名誉教授、環境を考える経済人の会21事務局長等を歴任。主著は『
新・日本経済入門』(日本経済新聞出版社)、『
ゼミナール日本経済入門』(同)、『
環境経済入門』(日経文庫)、『
環境再生と日本経済』(岩波新書)、『
サッチャリズム』(中央公論社)、『
サステナビリティ経営』(講談社)など。