毎月勤労統計不正問題、NHK日曜討論でも繰り広げられた与党側の論点ずらし

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 今、国会で注目を集めている毎月勤労統計の不正問題。  2019年2月17日、『NHK日曜討論』ではこの不正問題が冒頭20分を使って各党の議員たちの間で議論された。残念ながら、国会と同様、与党議員を中心に論点ずらしが見られた。具体的には、問題の対象範囲を広げて、重要な論点を曖昧にしようという意図が透けて見えた。  統計不正問題を追及している法政大学の上西充子教授は、批判の声をツイートした。 ”今日の日曜討論でも、野党は、特別監察委員会の委員長を委員長の立場で参考人に呼ぶことを与党が認めないことや、2015年4月に政府にとって都合の悪い賃金の値が出ることについて3月31日に総理秘書官が問題意識を伝えていたことなどを具体的に指摘。しかし岸田政調会長は論点ずらしに終始。10:49 – 2019年2月17日–上西充子 (@mu0283) ”国会は野党vs政府だけれど、日曜討論は、野党vs与党。ここでも与党は、統計の信頼が崩れたのは問題と総論では問題意識を共有する姿勢を見せつつ、各論になると野党の指摘を全く受け止めずに論点をそらし、これからの対策を語り、今問題として指摘されていることに答えないやりとりばかりだった。10:55 – 2019年2月17日–上西充子 (@mu0283)” ”司会者は、「今の野党の指摘、どう受け止めますか」と自民党と公明党に振って、自民党と公明党がもっともらしく答えて、それでおしまい。 本当は、「4月3日に発表する勤労統計の値について3月31日に事前に総理秘書官に伝える、これは異例のことではないのですか」など、さらに司会が突っ込むべき。10:57 – 2019年2月17日–上西充子 (@mu0283)”  まず、毎月勤労統計不正の問題で注目すべきは、2018年1月のタイミングで賃金の算出方法が大きく変わったことである。変更が行われた昨年末に発覚したのは、2004年から東京都の500人以上規模の事業所について不正な抽出を行い、それを2018年からは復元を始めたという問題であったが、それに加えて統計手法の変更として、ローテーションサンプリングの導入、遡及改訂の廃止、ベンチマークの更新、そして日雇い労働者の除外、が同時に行われている。  これらの変更の結果として2018年1月から賃金水準が上振れしたのだが、それが官邸の圧力によるものではないかというのが、今、国会で焦点になっている問題だ。  これらのポイントは国会パブリックビューイングの街頭上映映像2分40秒頃から明石順平弁護士(「アベノミクスによろしく」「データが語る日本財政の未来」著者)が解説しているのでご視聴頂きたい。また、官邸の介入疑惑と日雇い労働者の除外の影響については、2月16日時点までの国会審議の状況を同映像で法政大学・上西充子教授が1時間にわたって詳しく解説しているので、そちらでご確認頂きたい。  これらの前提を踏まえた上で、本記事では自民党・岸田文雄議員、公明党・石田祝稔議員、日本維新の会・浅田均議員の番組中の発言を検証していく。
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「問題意識を共有してる」風だけど論点ずらし
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