四国電力伊方発電所では、1号炉2号炉の廃炉、ラ・アーグでの委託再処理契約の失効、六ヶ所村再処理工場の完成遅延が重なり、あと
数年で使用済み核燃料ピット(PWR陣営での使用済み核燃料プールの方言:SFP)がいっぱいになり、原子炉の運転が不可能になります。そのため使用済み核燃料の乾式貯蔵が急務となっています。そのためには伊方町、八幡浜市の合意が必要となり、活発なPA活動が行われています。
そのため八幡浜市では、一般財源から昨年6月補正で約300万円の予算が組まれ(参照:
八幡浜市 平成30年度6月補正予算資料)、選ばれた68人の市民を対象とした日本原子力発電東海発電所(茨城県東海村)の視察研修が(参照:
“八幡浜市6月補正案 乾式貯蔵・廃炉視察へ|愛媛新聞2018/5/29” )、12月補正 で30万円の予算が組まれ乾式貯蔵施設講演会が企画されました(参照:
八幡浜市 平成30年度12月補正予算資料)。
すでに「市民有識者」を対象とした研修旅行は終わっており、私は、2/6の講演会のみに参加することとしました。
会場は、保内町(ほないちょう:伊方発電所分水反対運動があった旧保内町で、このために伊方発電所には野村ダム等の水は分水されていない)の八幡浜文化会館ゆめみかんで、2/6 13:00-16:40の開催でした。会場内では、市民代表者と市民の区画に別れており、私は市民席で、後方2列目となりました。
13時開会時点での会場全景 牧田撮影
人数は多く盛況ですが、見事に年配男性だらけです。開会前の雑談を仄聞する限り、業界団体、地域団体よりの事実上の動員ないし割り当てと思われます。やはり平日日中では、一般市民の参加は極めて困難であり、また人口の過半数を占める女性が極めて少ないというのはよろしくありません。仮に動員や割り当てであればこそ男女比は1:1であることは必須でしょう。
八幡浜市職員には負担となりますが、こういった地域の将来を決める重大事には、土日祝日開催でもっと多くの市民が自由参加出来るようにすることは必須です。
この講演会では、講師として大阪府立大学名誉教授の長沢啓行さん(機械工学・経営工学)が反対の立場から、東京工業大学特任教授の奈良林直さん(原子炉安全工学)が賛成の立場からの講演でした。
かつてと異なり、ほぼ対等な立場で賛成、反対の双方の立場から講演が行われるのは、大きな改善です。最低限の公正さはあると言って良いでしょう。このことは高く評価出来ます。
日本は、使用済み核燃料の乾式貯蔵等による暫定管理では1980年代半ば(Surry N.P.P. 1986~)には実用化が始まった合衆国に比して少なく見積もって30年立ち後れており、この分野の専門家は極めて少ないのが現実です。
結果、原子力業界内からこの分野の専門家が一般向けに説明を行う機会は極めて稀少であり、今回もそうではありませんでした。原子炉の運転が出来なくなる間際までこのような重要技術が立ち上がらず、人も育てず、まさに間際になってOBやOGがPA活動に駆り出される不健全な姿が眼前にありました。
とはいっても私は、原子力発電所の固有安全性をおおきく高める乾式貯蔵施設についてどのような理路で反対の論を述べるのかに強い関心があります。また、「プルトニウムは32g食べても安全」という名言を残した奈良林氏がどのような人物であるのか、どのような論を展開するのかに興味津々でありました。所詮、伝聞は作り物、本人がどのような論を展開するのか、自分自身で見聞きしなければ本質は分かりません。
この連載では、今後講演順に従い、長沢啓行さんの講演を第2回で、奈良林直さんの講演を第3回でご紹介し、第4回で講評をする予定です。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』第4シリーズPA編−−1
<取材・文・撮影/牧田寛 Twitter ID:
@BB45_Colorado>
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についての
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