以上のことから必然的に導かれるのが、UNITEの「誕生」は政権の意向を反映したものだったとの推論だ。この推論が的を射ていたとすると、密かに行われてきた一連の策動を暴かれ“依頼主”へ報いることが難しくなった教団サイドの面目は丸つぶれである。週刊朝日の記事に勝共連合上層部が激昂した理由はここにあったのではないか。
そして、政権側・官邸筋が統一教会の2世信者たちを使って印象操作を行い、世論を誘導しようとしていたとすると、道義的な問題に留まらず政教分離の観点からも問題となるであろう。
果たしてUNITEの結成とその後の一連の活動は、教団首脳との裏取引を経た官邸サイドの指示によるものだったのか。それとも官邸の意向を「忖度」した教団サイドが「勝手に」行ったのか。確証は得られていない。ただし、それまでに判明した両者の密接な関係性から鑑みると、政権が直接関与した疑いは限りなく黒に近いグレーと言えるだろう。
そして、その後も発覚し続けた政権と教団の関係から、筆者の確信はより一層裏付けられていくことになる。
国際勝共連合の機関誌『世界思想』では
安倍首相がたびたび表紙を飾り、教団系日刊紙『世界日報』やその月刊誌『Viewpoint』に掲載される記事の論調は安倍政権の政策を支持するものが目立つ。
安倍政権にとって統一教会は、様々な便宜と引き換えに票を集めてくれる使い勝手のいい集票マシーンというだけでなく、2世を含む信者を総動員してバックアップしてくれる便利な存在でもある。そして教団側は、安倍政権の庇護の下で体制を維持し、勢力拡大を狙っている。利害が一致した両者は、歪な共存関係を続けてきた。その共存関係に担ぎ出されたのがUNITEメンバーに代表される従順な2世信者たちだったということになる。
安倍政権の推し進める改憲政策のイメージ戦略を担った学生組織UNITEの存在は、「彼ら」の目論見とは逆に日本の中枢で横行する
「政権と問題教団との癒着を示す重要証拠」となっている。
伝道数の低下による1世の青年信者減少の影響を受けて、街頭で行われている偽装伝道には近年、多くの2世信者が勧誘員として動員されており、その中にも相当数のUNITEメンバーが含まれている。
合同結婚式でマッチングされた家庭で生まれ育った従順な2世信者がこれらの策動に利用されている実態は、特異な信仰体系を持つ家庭で生まれ育った境遇に葛藤を抱く2世の問題と同様に看過できるものではない。
教団サイドには、さらなる野望があった。そのキーワードは“
国家復帰”だ。教団が創設した世界規模の議員連合組織を巡っては、あからさまなバーター疑惑も浮上した。
2016年から翌17年にかけて、閣僚や副大臣を含む個々の国会議員と統一教会との関係がより一層可視化された。次稿では、その恥ずべき関係と教団が企てる“国家復帰”計画を詳らかにする。(文中敬称略)
<鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)・Twitter ID:
@cult_and_fraud>
すずきえいと●滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『
徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)