私がネット株取引を始めたのは2004年からです。しかし10年に70歳で大学を退職するまでは現物株中心でした。現物取引の対象は配当利回りが高く、その割に株価が安い銘柄です。具体的には三菱F、三井住友Fなどのメガバンク、損保、商社、製薬などが中心でした。
原則1年に2~3回売買できれば上出来という感覚でしたが、買値以下の状態が続き、2年、3年保有する銘柄もありました。それでもメガバンクなどの配当利回りは3~4%あり、実質ゼロ金利の銀行の定期預金と比べれば文句なく有利だという判断でした。
信用取引は実験を兼ねて小額投資に限定していました。小額投資とはいえ、銘柄選定、安値買い、高値売り、追証を避けるための信用維持率キープなどは簡単に見えても結構難しく、6か月後に損切りに追い込まれる銘柄もかなりありました。
ローリスク・ミディアムリターンを目指す「石橋を叩いて渡るネット株投資術」(石橋攻略)では、信用取引は十分な準備をしてから始めるように勧めています。具体的には、現物取引を少なくとも1年以上、できれば2年程度経験してあなたなりの相場観を養ってからでも遅くはありません。
退職後、それまで漫然とやってきたネット株取引の経験を私なりに体系化し、毎日の取引を記録し、月ベース・年ベースで結果を数値化するようにしたのが2012年1月からです。第2次安倍内閣がスタートする約1年前です。
2012~2017年の6年間の取引実績は、失敗した年もあれば、成功した年もあります。
失敗した年は前年の成功で気持ちが大きくなり、信用を拡大し過ぎて安値買いのつもりが高値買いになってしまい、損切りに追い込まれた年です。その反省から現物と信用をうまく組み合わせた安定度の高い取引スタイルがないものかといろいろ考え、試行錯誤を繰り返しました。その結果、現物と信用のベストミックスという新しい取引スタイルにたどり着きました。
現物と信用のベストミックスに当たっては、次の3点を工夫しました。
第1は現物取引も信用取引同様、短期売買で差益を目指すことです。現物取引も1万~2万円以上の差益が得られる場合はためらわずに利益を確定します。ネット株取引が普及する以前は、現物株は長期保有が一般的でした。
毎年の配当金を得ながら株価が上昇するのをじっくり待ち、十分な差益が得られた段階で売却する、というのが普通の投資スタイルでした。それに対し信用取引は配当金の取得よりも、短期売買で差益を得るのが主目的です。
「石橋攻略」では、現物は長期保有、信用は短期保有の区別を無くし、現物取引も信用取引と同じように短期売買による差益を目指します。
現物取引をしている私の友人からある日こんな相談を受けました。ソニー株を500株持っており、今売れば合わせて15万円程度の差益が得られるが、好きなソニー株を手放すのが寂しい、と。
私は次のようにアドバイスしました。
あなたが株式投資をする目的は何ですか。利益を得ることではないですか。直ちに500株すべて売却して15万円を手にすべきです。ソニー株はいつまでも上昇するわけではなく、必ず下落する局面が来ます。
その時、またソニー株を買えばいいではないですか。好きなソニー株を短期で売買することで利益が得られれば、あなたはますますソニー株が好きになるのではないですか、と。