同性婚の代わりに、連帯保証人にされたゲイ男性の悲劇<競売事例から見える世界26>

法的に認められていない同性婚ができない代わりに、連帯保証人になることで”絆の深さ”を証明しようとしたゲイ男性。しかし、パートナーの思惑は……

 近年のトレンドワードでもある「LGBT」。  今更言うまでもないが、女性同性愛者レズビアンの「L」、男性同性愛者ゲイの「G」、両性愛者バイセクシャルの「B」、身体の性と心の性が一致しない性同一性障害トランスジェンダーの「T」という頭文字を組み合わせた表現だ。  これまで公表も難しく、虐げられてきた存在でもある性的マイノリティーの権利や理解を求める活動の代名詞としてもこの「LGBT」という看板が掲げられることもあり、ニュースメディアで見かけることも多くなった。  そんな「LGBT」を公表する債務者に、差し押さえ・不動産執行の現場で出会うという事例もあった――。    自治体が若い世代の誘致に開拓した大規模な住宅地。駅からは距離があるものの、バスなどを使えば利便性も高く、周辺にはショッピングモールや飲食店など店舗が充実している。    若い世代にも手の出しやすい価格帯、小奇麗に統一感のある建売住宅が並ぶその町並みは、一区画だけが田んぼの中に浮かぶテーマパークとも思えるほど。  そんなテーマパークの中でも最も立地条件の良さそうな場所に当該物件は佇んでいた。  多くの差し押さえ物件が執行時には荒れ果てている中、今回の物件には手入れが行き届いている印象があった。  それでも近隣住民からは何らかの理由でマークされていたのか、我々執行人チームが当該物件前で執行開始前準備をしていると、近隣からの視線が痛いほどに突き刺さる。  呼び鈴を鳴らすと近隣の住民は身を潜め、代わりに出てきた小柄な男性債務者が「どうぞ」と我々を招き入れる。  執行人が玄関に上がりドアが閉まるなり…… 「騙されちゃったのよ……。私が悪いんだけどね……」  債務者がステレオタイプなオネエ口調で切り出す。  聞けば、インターネット上で知り合ったゲイを自称する男性とパートナーになり、トントン拍子で一緒に暮らすことになったという。  しかし、日本国内では同性結婚が認められていないため、この事実婚状態を深めようという口車に乗せられる形で、複数の借金連帯保証人にされると、瞬く間にトンズラされてしまったとのこと。  急速に開放感の広がるLGBT界隈だが、それ故にLGBT内コミュニケーションや対人関係、特に恋愛パートナーとしての関係性構築には未成熟なものも多く、今回の債務者男性のように食い物にされてしまう事例も少なくない――。
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世界でも類例のない悪制、日本の連帯保証人制度
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