それにしても、なぜこれほどまでにUNITEは筆者の直撃取材を警戒するのだろうか。その答えの一端は前述したようにUNITEメンバーへの直当て取材の成果にある。彼らが隠しておきたかった
「UNITE=統一教会の2世信者組織」を筆者が暴いてしまったのだ。そして週刊朝日の記事が、
UNITEを使ってある事を成そうと企てていた人たちの目論見を台無しにしてしまった。内部情報によると、記事を読んだ勝共連合の上層部は激昂したという。
UNITEを駒とする「彼ら」は、筆者の直撃取材を受けたメンバーの口から真実が明かされてしまうことを惧れていた。それは、この保守系大学生組織に関する機密事項の存在を示唆していた。
肝心なのは、同教団の2世信者が自主的・自発的な意思を以って対外的な示威活動を行なうことは、過去の事例をひもといてもあり得ないという点だ。つまり2世信者が参集したUNITEは「自主的な独立組織」ではなく、教団サイドのコントロール下にあるということになる。では、その背景には何があるのか。
UNITE誕生前夜の政治情勢を改めて振り返ってみよう。
当初、2016年の参院選は、衆参同日選挙になるのではないかとの予想が立てられていた。そして選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる法案が施行されて最初の国政選挙ということで、若者の政治参加への関心が高まりを見せる中、SEALDsが若者に限らず多くの国民の支持や注目を集めていた。さらには参院選全32一人区で野党統一候補を擁立するために独自候補を立てないと決定した共産党が、自民党にとって初めて脅威となっていた。
こうした背景から、この時期に
「現政権の政策・憲法改正を支持し、共産党を批判する反SEALDsとでもいうべき大学生グループが全国で自然発生的に誕生し、各地で声を挙げている」という構図を最も欲していたのは政権・官邸筋だったのではないかとの推測が改めて導かれる。
UNITEの結成や活動に政権・官邸の意向は働いていなかったのか。その疑惑を再度念頭に置いて検証を進めた。
繰り返すが「UNITEは国際勝共連合の下部組織ではなく大学生による自主独立組織である」というのが、勝共連合とUNITE側の言い分だった。勝共連合の機関紙『思想新聞』10月号に掲載されたインタビュー記事でも、小村代表はUNITEの全国への拡大について「ホームページの呼びかけなどを通して全国から多くの学生が参加した」と述べている。
「憂国の念に駆られた大学生によって自主的に結成された学生組織が、ホームページの呼びかけなどを通して全国に拡大、各地で街頭演説やデモ活動を行ない一大ムーブメントとなっている」これが
UNITE側のストーリーだ。
UNITEは公式サイトやSNSで頻繁に情報を更新。その中で自分たちの活動展開を「快進撃」と称し「真に国を憂う大学生たちが立ち上がり、注目を集め始めている」などと自画自賛、あたかも安倍政権を支持する学生組織の活動が、社会現象となっているかのような発信を続けてきた。
ところが、実際に彼らの活動を取材すると、その発信内容と相反する実態ばかりが露見した。筆者が目撃した街頭演説の現場では、彼らが喧伝するような
「一般の人の支持を集めている」「多くの人が学生の声に耳を傾けた」という光景は一度たりとも確認できなかった。
彼らのチグハグかつ不自然な言動や行動は何に由来するのか。筆者は、UNITEに関する教団内部資料を入手した。その内容から、ついにこの大学生集団の
「正体」が判明した。
次稿では、UNITEの正体と彼らの活動に関与した政治家、そして首相官邸での教団首脳との密談について記す。(文中敬称略)
<鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)・Twitter ID:
@cult_and_fraud>
すずきえいと●滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『
徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)