「俺が俺が」も「いいね」に振り回されるのももう終わり。これからは「自己中3.0」

山口博
 ビジネス環境の変化が加速する今日、一人ひとりのビジネスパーソンにとって、キャリア開発の選択肢は多様化している。音楽家からエンジニア、コンサルタント、経営者、大学教員として、大胆にキャリア開発をしている松永エリック・匡史氏に、本誌連載でおなじみの山口博さんが迫った。

業種より重要なのは一貫したマインドセット

ONE+NATION Digital&Media Inc.代表取締役・CEO/プロデューサー、アバナード株式会社デジタル最高顧問の松永エリック・匡史氏(左)とモチベーションファクター株式会社代表取締役社長の山口 博氏(右)

山口 博氏(以下、山口):エリックさんは、ギタリスト、グローバルコンサルタント、経営者、大学教員として、それぞれ活躍されています。これ以上ないくらい大きな振り幅でキャリアを展開されているように見えるのですが、どのような思いでキャリア開発を実現してきたのでしょうか。 松永エリック・匡史氏(以下、エリック):一見、キャリアチェンジしていると思われるかもしれませんが、実は一貫したマインドセットに基づくキャリア開発で、自分としてはチェンジしている意識はありません。基本的に人が大好きで、人にあっと驚いてもらって、喜んでもらうことを実現するために生きてきました。その対象が音楽を聴くオーディエンスだったり、コンサルのクライアントだったり、学生だったりしているだけなのです。  音楽家として演奏することも、コンサルティングサービスを提供することも、経営者として新しいビジネスを実現することも、クライアントに喜んでもらうという意味では私にとってまったく同じなのです。 山口:なるほど。従来から変わらない自己実現の考え方に基づいていて、単にあらわれ方が異なるだけのことなのですね。しかし、それぞれの分野で大成することは、並大抵のことではないと思うのですが。 エリック:バークリー音楽院時代には、グラミー賞を受賞しているような偉大な音楽家が、とてつもない時間をかけて練習に練習を重ねている姿を目の当たりにしてきました。そして、その姿に感銘を受けました。大成するためには、既存的な鍛錬の積み重ねが最低限必要である。その姿は素晴らしいのだと思っています。 山口:しかし、誰しも努力し続けることは、容易ではありません。

【松永エリック・匡史】音楽家(ギタリスト)、ビジネスコンサルタント。ONE+NATION Digital&Media Inc.代表取締役 CEO/Producer。‘19年4月より青山学院大学地球社会共生学部教授に就任。バークリー音楽院、青山学院大学院国際政治経済学研究科修士課程修了

エリック:努力し続けられるかどうかは、どれだけ強い思いを持っているかによるのではないでしょうか。私はキャリア開発、ひいてはライフデザインを「自己中3.0」という概念でとらえています。 山口:自己中3.0とは、自己中心という意味の自己中ですね。 エリック:自己中1.0とは、バブル時代です。みんながバブルを自由に謳歌していたと思われがちですが、実は同じ価値観に向かっていたわけで、饗応するというような風潮に流されていて、自己中ではなかったわけです。だから高級ブランド品の店に列をなしているような現象が起きた。  自己中2.0は、ソーシャルネットワークが普及し、承認欲求の民主化が起き始めた時代です。みんなが承認欲求を満たされる環境になった。この時代も、誰しも自由に意思表示できる時代と思われがちですが、「いいね」と認められたい、行動の価値基準が周囲の評価にあるという状況です。つまり相手が「いいね」してくれることに合わせているだけなので、全然自己中ではないのですよね。  いずれも、自分自身が本当にやりたいことができていない。自分が好きでもない価値観に翻弄されているわけです。では、人生100年時代と言われる今日、風潮に流されて、周囲の評価を気にして生きていくことに意味があるのか。本当の自己中は、まさに「好きこそものの上手なれ」と言われるように、本当にやりたいことをやる、それが自己中3.0の時代だと考えています。 山口:自分の行動の価値基準が自身の内面にあることは、まさに自己実現を果たすためにもっとも重要なことだと思います。しかし、「いったい自分のやりたいことが何なのかわからない」という人も少なくありません。 エリック:自己中3.0の時代とは「他人に嘘をついても、自分に嘘をつかない」ように生きることだと説いています。他人に嘘をついてもいいというのは、他人を騙してもいいという意味ではありません。他人に対しては自分のやりたいことを脚色して話したとしても、自分自身に対しては心の奥底からやりたいことに忠実に生きるということです。 山口:それが難しいのではないのでしょうか。
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