冷戦に伴う「北方領土」問題の高まりは、
冷戦終結から30年近く経つ現在、日ロ間で平和条約を締結することが可能になっていることも意味します。ロシア・エリツィン大統領による「北方領土問題5段階解決論」(1990年1月16日)のように、冷戦終了後、日ロ双方で解決の模索が何度もなされてきました。
今後、
日ロ間で領土問題の解決を図るならば、冷戦時の影響をできる限り排し、冷静に交渉していくことが必要でしょう。
その際、
日本にとって交渉の出発点、そして基盤となるのが、日本が受諾・批准した条約等にあることは疑いありません。それらを無視することは、日本にとってどのような意味を持つかに関係なく、国連憲章や国際法の信義則に反します。
日ロの平和条約交渉における領土をめぐる選択肢は、大きく次の4つです。
①色丹・歯舞・千島列島・南樺太の引き渡しを求める。
②択捉・国後・色丹・歯舞の引き渡しを求める。
③択捉・国後のロシア主権を認め、色丹・歯舞の引き渡しを求める。
④択捉・国後・色丹・歯舞のロシア主権を認め、全島の引き渡しを諦める。
どの選択肢を選ぶのか、今こそ、国民的に学習し、議論することが必要でしょう。なぜならば、
永遠の隣国であるロシアとの関係を左右する重大な問題だからです。江戸末期・明治維新以来、日本を悩ませてきた対ロ関係について、
恒久的な友好関係を構築するのか、それとも恒久的に緊張の火種を持ち続けるのか、岐路に立っています。
<文/田中信一郎>
たなかしんいちろう●千葉商科大学特別客員准教授、博士(政治学)。著書に『
国会質問制度の研究~質問主意書1890-2007』(日本出版ネットワーク)。また、『
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID/
@TanakaShinsyu