本研究から学べることは、微表情が未来の出来事に関するウソを検知できるならば、犯罪やテロ行為の意図を持っている人物を職務質問や空港の検査の段階で事前に検知することが出来得るということです。
またこれまで微表情は0.04秒から0.2秒と考えられてきましたが、本研究ではそこまで早い微表情は検出されず、それよりも長い0.4秒から0.5秒の微表情が生じることがわかりました。このことから適切に訓練されれば、生身の目でも微表情を検出し得ることが示唆されます。
また微表情のみで60%以上の精度で真偽を区別できるならば、微表情以外のウソ検知法ー表情以外の非言語チャンネルの変化・戦略的な質問法・言語分析法などーを用いることでウソ検知の精度をさらに高められることが期待できます(ちなみに、日々ウソに関わらない私たち一般人であろうと日々ウソに関わる警察官だろうと、ウソ検知率は54%であることが種々の研究からわかっています。
したがいまして、微表情のみで63%~68%の精度でウソ検知が可能であることは結構凄いことです。)
もちろん本研究一つの結果をもって、微表情で全ての意図の真偽がわかる、と一般化することは出来ません。犯罪予防という観点からこうした微表情の研究が今後ますます増えることが期待されます。
参考文献
Matsumoto D and Hwang HC (2018) Microexpressions Differentiate Truths From Lies About Future Malicious Intent. Front. Psychol. 9:2545. doi: 10.3389/fpsyg.2018.02545
【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『
ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『
「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『
0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。