17日の夕刻、前回の原稿書きの最中に元山仁士郎氏が記者会見をするという知らせを受け、その原稿を急いで編集者に送ってから、宜野湾市役所前へ向かった。
これは、個別に取材を受け続けているとキリがなく、元山氏の体力も著しく消耗してしまうので、合同記者会見という形で一度に済ませたい、という仲間たちの配慮の結果だった。
その記者会見で、元山氏はこう述べていた。
「『分断』こそが政府の狙い」と語る元山氏
「現時点で5市長の(県民投票拒否の)動きには変化がないと把握していますが、わたしは宜野湾市、沖縄市、うるま市、宮古島市、石垣市の市長が県民投票に参加すると言ってもらえるまで、できる限りハンストを続けたいと思います」
体力の限界との相談ではあるけれども、との言葉も付け加えていた。
わたしはこう質問し、元山氏はしっかりと丁寧に答えた。
————元山さんは昨日(16日)の村本大輔さんとの話の中でも、沖縄は「分断」を乗り越えるべき時だと発言していましたが、わたしから見ても、5市長(宮古島市、石垣市、宜野湾市、沖縄市、うるま市)は、まさに沖縄の民意を分断しようとする中央からの力に乗っかってしまっているように見えます。その点、元山さんは、どのように感じていますか?
元山:辺野古の工事を強硬に進めようとしている国からすると、菅官房長官が言うように「県民投票は辺野古の基地建設工事に影響はない」と思わせたいのでしょうが、そうであれば、(5つの市の市長は)逆になんでここまでするのかな、という気持ちです。
そして、彼はこう続けた。
元山:沖縄の人が分断された状態なら、ずっと基地を置ける。軍事的には沖縄でなくてよいのに、政治的には(基地を置いておくのは)沖縄だ、と政府は考えていると思います。そういう状況をつくり続けたいんじゃないかな、という思惑が見え隠れしている気がしますね。
戦後長い間、米軍統治下で認められていなかった投票権が、沖縄では先人たちの努力でようやく1968年になって勝ち取ったものですが、それを今、沖縄県の一部の市長が取り上げるというのは、凄く皮肉なことだと思いますね。
————そのことへの怒り、許せない、という気持ちが、このハンストに繋がったと思ってよいですか。
元山:そうですね。これまで、米軍に対して、あるいは日本政府に対していろんな手段で抵抗し、権利を守り暮らしを守ってきた人たちがいます。今回5市長が投票権を奪うという行為に出る中で、わたしがハンガーストライキという形で、市民・県民・国民に訴えかけるというのは、まったくおかしなことではないと思っています。
————その思いが市長たちに通じるかというのは、酷な言い方になるかもしれませんが、元山さんの体力の限界とのせめぎあいの中で、非常に厳しい状況だと言わなければならない気もします。その点はいかがですか。
元山:わたしがハンストをして訴えかけていることが、市長の耳に入るか、市民・県民・国民に届くかは、マスコミの皆さんにかかっていると思いますので、ぜひともこの理不尽な状況を伝えていただければな、と思います。
それは、マスコミの一隅で仕事を続けているわたし自身への見事な切り返しの言葉でもあった。
元山氏とは2014年の秋、彼ら若者が主催する「辺野古・高江バスツアー」に同行取材して知り合って以来、4年以上の付き合いになるのだが、この間に彼が大きく精神的な成長を遂げていることがビンビン伝わってきて、強く胸にこみ上げてくる感慨があった。