毎月100万円ほしくても、50万円しか稼げない「保有効果」の罠<現役愛人が説く経済学67>

あなたの売値は、他人から見るとその半分以下でしかない!

 これを裏付ける、「保有効果」の実験があります。2017年にノーベル経済学賞を受賞した学者、カーネマンが行なったもので、被験者をA、Bと2つのグループに分け、Aグループの人たちにはマグカップを渡します。そして、「これをBグループの人たちに売るなら、いくらで売りますか?」と聞いて1人1人、値段を考えてもらうんですね。  一方のBグループには、「あのマグカップ、いくらなら買いますか?」と聞き、値段を答えてもらいます。すると、売る側のAグループの答えは「平均700円」だったのに対し、買う側のBグループは「平均300円」に過ぎませんでした。1つのマグカップを、持っている側は700円で売ろうというのに、買う側は「300円なら買ってもいい」という。その差は2倍以上にもなります。  ここから何が言えるかと申しますと、人間は「自分の持っているものの価値を、持っていないときと比べて2倍以上に高く見積もってしまう」ということです。あなたが持っているものの価値は、他人から見れば2分の1以下の価値しかないということですよ。恐ろしいですね。  よくフリマアプリやネットオークションで、なるべく高値で売りたいからと、中古品を新品とあまり変わらない値段で売っている方を見ますが、なかなか売れません。自分が思うより、かなり安い価格で出品しないと入札されないのは、この保有効果によるものです。  愛人契約も、これと同じでございます。たとえば、毎月愛人をするなら「100万円もらわないと、割に合わない」と思っている女性がいるとします。その方は、男性に対して行うメールのやり取りですとか、デート、セックスの価値を、毎月100万円に相当すると考えているということです。自分には100万円の価値がある、と思っているわけですね。  ところが先の保有効果に照らしますと、愛人マーケットにおいて、彼女は「50万円以下」でしか売れません。顧客から見れば、彼女は50万円の価値しかないのです。「そんなに安く売るくらいなら、最初から売りたくない」と考える女性が出てくるのは自然なことです。  この保有効果があるため、愛人契約はなかなか上手くいきません。1回のデートで15万円欲しいと考えていても、実際は8万円ということもあるわけですから。私もそれなりの苦労をいたしました。  この壁をどうやって乗り越え、愛人ビジネスをスケールさせるのか、次回以降でご説明してきたいと思います。 <文・東條才子>
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