英国人大学生や在英研究者にとっても大きなデメリット
一方、英国人大学生にとっても問題が出て来る。例えば、彼らはEUが実施している交換留学生エラスムス(Erasmus)制度の対象枠から外されることになる。これまで英国人大学生の50%はこの留学制度を利用してEU圏内の大学に留学できた。同様に、15500人のEUの大学生が2015-2016年に英国に留学もできた。(参照:「
Publico」)
更に問題は、英国以外の研究者や学士者も今後英国に留まるか否かという問題も発生する。研究者にとって必要な研究資金がEUから今後受けられなくなるという事態を避ける為にヨーロッパ大陸の方に籍を移す可能性が高くなって来る。これは英国にとって大きな損失となる。既に触れたように、この2年連続して英国で研究を積もうと志している大学院生が9%減少しているというのはこれまで世界でもトップレベルを維持して来た英国の研究レベルの後退を将来的に意味するようになる。
実際、最先端の医学研究所として知られているロンドンのフランシス・クリック研究所(Francis Crick Institute)のスタッフの4割はEU加盟国からの出身者であるが、彼らの多くがこのまま英国に留まることは難しいと考えているというのだ。それは同様に、英国人研究者もヨーロッパ大陸の方に移る可能性もあるということになる。(参照:「
Publico」)
スコットランド出身の天体物理学者ジョスリン・ベルさんもバレンシア大学の最高栄誉賞オノリス・カウサの受賞でスペイン・バレンシアを訪れた際に、彼女は「英国は研究分野における国際協力はこれからもっと複雑になる」と「
El País」の取材に答えている。
英国のEUからの離脱は英国の大学にとって悲惨な状態を及ぼすようになると承知している英国の大学運営者は学生を動員して新たに国民投票の実施を要求している。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身