防衛省YouTubeチャンネルより
2018年末の12/20に発生した日韓両国間における軍事的インシデント、
「日韓レーダー照射問題」は、膠着化を著しくしており、日本国内において仲裁を期待されていた
合衆国は現時点で仲裁には後ろ向きです。(参照:
レーダー照射で泥沼化 水面下の協議は… 2019/01/07 報道ステーション)
また、今月14日にシンガポールで開催された
実務者協議も不首尾に終わっています。(参照:
日韓、シンガポールで協議=レーダー照射問題、平行線のまま 2019/01/14 時事通信)
この実務者協議について、1月15日に韓国国防部の定例ブリーフィングにて取り上げられましたが、
日本国内の報道とかなりの乖離が見られます。この韓国国防部ブリーフィングについての日本国内の報道の多くは、翻訳(機械翻訳、有志による翻訳)と照合すると事実とは到底評価し得ないため、相変わらず、
日本国内報道は極めて質が低いと見做す他ありません。ただし、通信社の報から贅肉を削ぎ落とすと使える程度にはなります。
●韓国国防部定例ブリーフィング 2019/01/15(機械翻訳可能)
http://www.korea.kr/news/policyBriefingView.do?newsId=156313144
●韓国国防部定例ブリーフィング 2019/01/15 有志による翻訳
http://www.kjclub.com/jp/board/exc_board_53/view/id/2784297
(参照:
“「日本が無礼な要求」と非難=レーダー協議で韓国国防省” 時事通信 2019/01/15)
1月14日の実務者協議においても日本側はメーカーのカタログ公表値を提示した上で韓国側にSTIR-180の全データの提示を求めるなどの無理強いをしているとみられるだけでなく、相変わらず
P-1が探知したのがXバンドであったのか、Cバンドであったのか、連続波であったかなどの機密程度が低く、真相究明には最低限必要な情報すら提示していません。
現在、日本側の公式な主張は、
「P-1哨戒機がFC系レーダー波の照射を受けた」だけであり、その周波数帯域、連続波であるか否かについて、更には日本側が主張する“FCレーダー“がSTIR-180なのか、MW-08なのかすら言及すらしていません。
所轄外省庁の副大臣がSTIR-180のXバンドだったと発言しているという報道がありますが、これが
事実ならば防衛省の機密情報が別官庁に漏洩していることを意味しますし、この方は本件についてはドシロウトというほかない方です。裏付け情報も全くありませんで、この方の発言なるものは全く意味を持ちません。
日韓レーダー照射問題は、完全に膠着化の趨勢です。これまでに
日本側で垂れ流された大量の誤情報や出所の怪しい情報によって日本側報道は惨憺たる状態であり、そのような
低質の報道が大量に流れているというのは極めて憂慮すべきことです。
また、
インターネット上ではフェイク・ニュースが大量に流れており、例えば次の図の類は、初期に大量に流れていました。
偽図の一例。KJ Club掲示板に日本側から出典未提示で書き込まれたもの
(出典:
KJ Club掲示板)
1) 広開土大王とP-1の位置が100km近く離れている。(視認不能で、電探でも確実に探知し得るとは言い難い。)
2) ほぼ同時に赤丸を事態発生座標とする偽図も現れたが、それは領海ないし接続水域内。まさに真っ赤な嘘。
3) これらの偽図は、年が変わる頃にあらかた消え失せている。
4) 本件事態にEEZは全く無関係。防衛省発の誤情報と言ってよい。
この事態発生の座標についてはこれ以上論評しません。既に優れた論評が発せられています。(参照:
“韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(5) – へろへろblog” 2019/01/14)
一方で、
完全に事実と反する「韓国の言い分は二転三転している」という「二転三転論」の一例としてこのようなもの(※
「現場の嫌がらせ」では済まないレーダー事件:日経ビジネス電子版” 鈴置 高史 2018年12月27日)があります。この論は、本連載
第1回、
第2回で否定されていますので、お時間のある方は両記事、ない方は
第2回とだけでも照合してみてください。
韓国国防部発表は韓国語ですので取り付きにくいですが、全文公開されており、機械翻訳や有志での翻訳でも実用可能な精度があります。なお、本連載では、韓国語話者、韓国語読解者の支援も得ています。更に、幸いなことに多くの韓国メディアも日本語翻訳記事を公開しています。
今回、
フェイク・ニュースの類が官邸周辺の複数の人物から執拗に発せられているのも特徴で、どのような人物が、なんの意図を持ってこのような有害無益なことを行っているのか、その人物の過去の言論も含めて慎重に注視し続ける必要があります。そして、幸いなことに
日本側発表も韓国側発表も原文にあたることができます。韓国語と日本語は文法が極めて似ているために、機械翻訳でも実用可能な精度が期待できます。また、日韓有志による翻訳も行われています。