今回の日韓軍事インシデントは、本来、実務者協議によって年末年始中には笑っておしまいにできたことです。しかも、
前回書いたように、おそらく日本側が主導権を獲得できたものと考えています。しかし現実には、完全に膠着状態であり、合衆国政府の仲裁も得られないようです。
そんな膠着状態に陥るだけの中、我々は本インシデントから何を教訓とすべきでしょうか?
1) 前線での意思疎通の悪さ
今回の軍事インシデントは、
日韓間の前線における意思疎通の悪さがすべての元凶と言えます。日韓は、韓米同盟、日米安保(同盟)という枠組みで軍事上の友好関係にあり、旧西側圏であること、経済関係の密接さなど、政治的にも民間においても関係の深い友好国と言えます。しかし、
友好国同士であっても相互の意思疎通が円滑でなければ軍事衝突が起こり得ることを今回のインシデントは示しています。
かつての冷戦期のソ連艦艇は、日常的に日本近海を航行しており、緊張も高かったのですが、今回の相手は友好国の艦船です。しかもSAR活動中でした。
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韓国側は、SAR活動中であったことをなぜ通告しなかったのか?(北朝鮮船が被救助船なので緊張度が高くかつ自前でやりたかったことは理解できる。)
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P-1がインシデントの発端となった接近飛行する前に韓国側に呼びかけなかったのはなぜか?(P-1の任務上、低空接触はやむを得ないが、相手艦船に敵意、違法性はないので、呼びかけるなどによって刺激を避けるべきではないか。)
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P-1は、どうして艦船が聴取していることを担保されている国際VHFでの呼びかけを繰り返さなかったのか。(他の二波は、航空無線であって艦船が聴取しているという保証はない。)
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P-1からの呼びかけの英語が酷すぎる。(映像字幕では意訳や超訳をしているが、字幕と英語音声の乖離が大きい。)
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広開土大王はなぜ応答しなかったのか?(呼びかけと認識できなかった、忙しくてそれどころではなかったというのは、それ自体が大いに問題といえる。)
明らかになった疑問点や問題点を洗い直して、再発を防ぐ手立てを講じるべきでしょう。
2) 今回の日韓軍事的インシデントに関する日本側政府内の情報伝達が伝言ゲーム化していないか?
今回の軍事的インシデントについてP-1から司令部へ伝達され、その後防衛省を経て官邸、自民党に情報が流れているが、防衛省から発信した時点での情報が不明確さを多く含んでおり
官邸周辺、自民党所属議員から誤情報が膨大に拡散されている。結果、
事実に立脚しない主戦論を煽ることになっている。これは極めて危険であり、大日本帝国滅亡の原点となった約90年前の失敗の再現という他無い。
・海自、防衛省からは
「火器管制レーダーからの照射を受けた」とだけ報告されている。
・探知電波が
Xバンドであったか、Kバンドであったか、Sバンド、Cバンド、Lバンドであったか、CW波であったか一切報告されていない。従って、証拠は一切提示されていない。
・防衛省の資料では、火器管制レーダーによる照射とされているが、それが
精密測定用電探であるのか、イルミネーターであるのか区別されていない。わざとであるのか、混同するように報告されている。
・電波放出源が
STIR-180であるのかMW-08であるのか、一切報告されていない。
・
CUESの説明が誤っている。防衛省による説明は虚偽と言ってよい。また、現在、CUESに関する邦文訳と解釈は、ほぼ全てが肝心なところで誤っている。外務省が責任を持って正訳を作成の上で公開せねばならない。また、現時点では正訳がないためCUESを論じる場合、原文(正文)を読まねばならない。(参照:
CUES原文)
・大変に重要な
韓国国防部12/14ブリーフィングの翻訳がつまみ食いされている。全文訳を配布せねばならない。
自民党本部における会議配布資料
※「自民党本部における会議配布資料」中山泰秀代議士Tweetより
自民党本部における会議配布資料その2
※「自民党本部における会議配布資料その2」中山泰秀代議士Tweetより
自民党本部における会議配布資料その3
※「自民党本部における会議配布資料その3」中山泰秀代議士Tweetより