虎ノ門と六本木の間に「日本一の超高層ビル」誕生へ。次のヒルズは「麻布台」に!?

麻布台

東京タワーより俯瞰した麻布台の再開発エリア(写真中央一帯)。写真左端は「六本木ヒルズ」、右端は「アークヒルズ千石山森タワー」

 この地で再開発を行うのは「森ビル」と「日本郵政」が参加組合員として参画する「虎ノ門・麻布台地区市街地再開発組合」。  再開発エリアは、東側は東京メトロ日比谷線神谷町駅、西側は東京メトロ南北線六本木一丁目駅までの約8.1ヘクタールに及ぶ非常に広大なもので、国の都市再生特別地区、国家戦略特区にも指定されており、この3月にも工事が開始される予定だ。  日比谷線では、2020年に虎ノ門ヒルズ近くに「虎ノ門ヒルズ駅」が開業するが、神谷町駅はこの虎ノ門ヒルズ駅まで僅か1駅、距離にして約1kmほどであり、虎ノ門ヒルズは徒歩圏だ。また、六本木ヒルズも約1.5kmほどの距離であるほか、再開発エリアの北側には高さ約209mの超高層複合ビル「アークヒルズ仙石山森タワー」も立地する。森ビルが麻布台再開発に参画したのは、同社がこれまで手掛けてきた再開発エリアと近接しており、相乗効果を生み出すことができるからであろう。
再開発計画地の位置図

再開発計画地の位置図。計画地の周囲は「再開発ラッシュ」だ。国家戦略特区「都市再生特別地区(虎ノ門・麻布台地区) 都市計画(素案)の概要」より

神谷町2番出口

日比谷線神谷町駅2番出口を出た地点、桜田通り(国道1号線)から西側を望む。写真左側が再開発エリアで、間もなく全ての建物が解体される。奥に見えるのは森ビルが手掛けた「アークヒルズ仙石山森タワー」で、2つの再開発エリアは隣接する

 今回の再開発エリアは大きく分けて「A街区」、「B-1街区」、「B-2街区」、「C街区」の4街区で構成される。  そのうち、本開発のメインとなる「A街区」には旧郵政省本庁舎跡の日本郵政グループ飯倉ビルを解体して地上65階、地下6階、塔屋2階建てのビルが建設される。高さは約323mで、竣工は2022年度末(2023年3月)の予定。竣工時には「日本一高い超高層ビル」となる。 「A街区」棟の館内には、オフィス、スーパーマーケットを中心とした商業施設などが入居するほか、インターナショナルスクールも設けられる。商業施設やオフィスのテナントについては現時点では未発表だが、六本木ヒルズなどのように広域の幅広い客層の獲得を目指したものではなく、周辺住民に加えてインターナショナルスクールに通う児童生徒やその保護者など、都心に住む外国人をターゲットにしたものになりそうだ。また、多言語対応の医療機関の導入も計画されている。 「B街区」はA街区の北側、南北線の六本木一丁目駅東側にあたり、そのうち「B-1街区」には地上64階、地下6階、塔屋2階、高さ約263mの、「B-2街区」には地上53階、地下6階、塔屋2階、高さ約233mの超高層タワーマンションが建設される。総戸数は約1,300戸。  また、「C街区」は神谷町駅西側にあたり、8階建て以下の低層4棟が建てられる。この街区には、現在再開発エリアに出店している店舗、寺院なども移転する。  各棟は地下通路で東京メトロ日比谷線神谷町駅、東京メトロ南北線六本木一丁目駅と直結されるため、両駅の乗り換えも便利なものとなる。
各棟の配置図

各棟の配置図。国家戦略特区「都市再生特別地区(虎ノ門・麻布台地区) 都市計画(素案)の概要」より

神谷町駅

日比谷線神谷町駅は再開発エリアと直結される

 なお、再開発後の名称については未定だが、森ビルグループが都心地域の再開発で用いている「○○ヒルズ」形式となる可能性が高い。そのため、この記事内ではこれ以降は便宜的に建物を「麻布台ヒルズ(仮称)」と称することとする。  開発に際して森ビルは「居住機能と商業・業務、文化、教育等の各機能が複合した、国際性豊かで安全・安心な緑とうるおいのある複合市街地の形成を目指す」としており、再開発エリア内には広大な敷地を生かして6,000平方メートルの中央広場を中心とした公園、遊歩道なども設置される。緑に囲まれた中央広場は大型イベントが開催できるほどの広さで、さらに、再開発エリアに隣接した位置にあり、鎮守の森が桜の名所として有名な「西久保八幡神社」もそのまま残されるため、他の「ヒルズ」とは一味違う「緑豊かな憩いの場」というイメージは一層際立つものとなる。
再開発完成予想パース図

再開発完成予想パース図。国家戦略特区「都市再生特別地区(虎ノ門・麻布台地区) 都市計画(素案)の概要」より

中央広場

再開発エリアの核となる「中央広場」イメージ。国家戦略特区「都市再生特別地区(虎ノ門・麻布台地区) 都市計画(素案)の概要」より

 ところで、「日本一の超高層ビル」といえば多くの人がJR東京駅の北東で三菱地所が開発中の「東京駅前常盤橋プロジェクト(仮称)」を連想するであろう。  こちらには高さ約390メートルの超高層ビルが建設される計画で、「麻布台ヒルズ(仮称)」よりも70メートル近く高い。しかし、このビルの竣工は2027年度の予定。つまり、「麻布台ヒルズ(仮称)」が「日本一の超高層ビル」となるのは約5年間だけである。また、「日本一の超高層」とはいえども展望施設などの設置計画は今のところない。最高層となるA街区の上層階はマンションとなる計画であるため、「日本一」の展望を満喫したいならば「一室を購入」するしかないであろう。
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再開発で消える歴史的建造物「旧郵政省本庁舎」
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