鉄道の手荷物検査強化。利便性とコストを踏まえた着地点を考える

検査は個人レベルでの犯行を想定か

 たしかに鉄道車内への“危険物の持ち込み”にまつわる事件は度々起こっている。‘15年6月には東海道新幹線の車内で焼身自殺事件が発生。さらに昨年6月にも同じく東海道新幹線で凶器を持った男性が暴れて一人が死亡する事件もあった。  JR各社や大手私鉄各社はこうした事件を防ぐために危険物の持ち込み防止対策を強化。今春から持ち込み禁止荷物に「包丁類・ナイフ類等」を追加するという。 「特に長時間停車しない新幹線での対策が急務なのは事実です。新幹線の車内は『警戒中』の腕章を巻いた警備員が巡回していますし、持込禁止荷物の規定改定もその一環。しかし、ただ規則に書いたり警備員が形式的に巡回するだけで抜本的な対策になるとは思えません。通路やデッキにも人があふれる多客期には巡回も難しくなりますし。もちろんテロ対策などというレベルにはまったく達していないでしょう」  あの地下鉄サリン事件を思い出してほしい。サリン散布の実行犯は、ビニール袋にサリンを入れて地下鉄に乗り込み、降り際に傘で袋に穴を開けてサリンを撒いた。透明な液体の入ったビニール袋をむき出しに持っていたらさすがに怪しまれるが、いくらか見つかりにくくしておけば今でも不可能ではないだろう。 「地下鉄サリン事件以降、鉄道各社は不審物対策を進めてきました。それが一定の成果を挙げたのは間違いないですが、ここ数年の“個人の凶行”を見れば組織的どころか一人でも“テロ”ができる。その“ぬるさ”に対する危機感が今回の手荷物検査の検討につながったのでしょう」
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抜き打ち検査の導入が現実的か
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