菅官房長官
もちろん、安倍首相の発言を事実か否かをチェックせずに報道したNHKの責任も大きい。そこで「報道に問い合わせをしてほしい」という菅官房長官発言に従って、筆者は1月8日にNHKに問い合わせた。
Q1)8日付『琉球新報』が事実誤認と指摘しているが、NHKの認識はどうなのでしょうか。
Q2)事実誤認と認識した場合、訂正文の発表や訂正放送をする予定はあるのか。
Q3)事実誤認の首相発言を放送したことについての経過、検証の予定について。
翌9日、NHKから回答が来た。
「番組内での政治家の発言について、NHKとしてお答えする立場にありません。また、他社の報道についてはコメントいたしません」
さらに1月11日、NHKに対して「公平性や多角的報道を定めた放送法違反の疑いがある」「日曜討論の司会者が安倍首相に(サンゴに大きな環境負荷を与える恐れのある)『赤土混入土砂投入問題』や『軟弱地盤問題』について質問しなかった理由」などについて再質問をしたが、以下のような回答しか返って来なかった。
「(放送法違反の疑いについて)1月6日放送の『日曜討論』には与野党9党の方にご出演いただいています」
「NHKは、公共放送として、憲法で保障された表現の自由のもと、正確で公平・公正な情報や豊かで良質な番組を幅広く提供し、健全な民主主義の発展と文化の向上に寄与するよう努めています。この役割を果たすため、報道機関として不偏不党の立場を守り、番組編集の自由を確保し、放送の自主・自立を貫き、自主的な編集方針に基づいて放送しています。なお、個別の編集判断や、取材・制作の過程に関することはお答えしていません」
安倍首相発言にすぐに野党議員が「事実誤認」と反論する機会がなかったにもかかわらず、NHKは放送法違反の疑いを否定。不正確な政治的宣伝を長時間行う“特権”を、安倍首相にだけ与えたのだ。
それなのに「公平」だと言い張り、辺野古海域に大きな環境負荷を与える恐れのある「赤土混入土砂投入問題」や「軟弱地盤問題」については全く聞かなかった。そして「自主的な編集方針」を盾に、取材・制作の過程については答えようとしない。
先の大戦時の日本が、戦果をデッチ上げた大本営発表を繰り返しても戦況が好転しなかったのと同じく、実態の伴わない環境保全策をいくら発信しても、辺野古周辺の貴重なサンゴが保全される保証はまったくない。
<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた
『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他
『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数