難民受け入れの玄関口でもあったパレルモ市長の心ある決意を報じる『El Pais』紙
イタリアはいま、ポピュリズム政党「五つ星運動」と極右「同盟」が連立政権を担っている。その政権の中で、首相ジュセッペ・コンテ以上の権力を振るっているのが内相であり「同盟」の書記長、マッテオ・サルビニである。
しかし、いま、そのサルビニと主要都市の市長の対立が激化している。
その対立の発端というのは、サルビニが複数のNGO船が救出した難民の受け入れを非人道的とも言えるほどに極力拒否していることだ。それに対して、イタリアの主要都市の市長がそれは憲法にも謳われている人道を犯す行為だとしてサルビニに批難の目を向けたからである。
この対立が表面化したのは、昨年12月に議会で難民・移民の受け入れをより困難にさせる政令が批准された時からであった。その政令によって、難民・移民が滞留許可を取得しても亡命申請が受理されるまでその正式な永住登録が出来ないとされたのである。
永住登録ができないと、保健サービスや地方自治体が提供できるその他の公共サービスも享受できない。すなわち、事実上滞留を認めないとしているようなものだ。
この政府の決定に対して、「非人道的な手段だ。それは犯罪を導くようになる」と言って、最初に反旗を翻したのが。シシリア・パレルモ市のレオルカ・オルランド市長である。
オルランド市長は「憲法に謳われている人権を侵害することになるのは明白だ。その共犯者になることはできない」と表明したのである。そこで彼はパレルモ市の民事局に、政府が決めた新しい政令を実施に移さないように指示したという。
オルランド市長は民法専門の弁護士でもある。政府が決定した政令を詳細に調べた上で、「市の条例を発布して市の職員が政府の政令の適用を無視しても彼らに責任が及ばないようにした」という。
この条例発布の決定は、「唯一、私の決定だ」と言うことを明らかにして職員が罪に着せられないようにするためだと述べた。
市長は「パレルモはこれまでもイタリアで難民を受け入れて来た所だ。そこが人種差別的な法は御免だと言っているのだ」とオルランド市長はスペイン電子紙『
El Confidencial』の取材に答えたそうだ。
パレルモはシシリー島の中心都市である。同島はリビアからの流民がイタリアに漂着するのに最短距離にある島のひとつであることからこれまで多くの難民が流入した。その経験を十分に積んでいるパレルモの市長がサルビニが下した政令は人種差別的な法律で人権を侵害するものだと判断したのである。(参照:「
El Periodico」)