【日本側の主張】
P-1哨戒機による哨戒飛行中、能登半島沖の日本の排他的経済水域内(EEZ)において、複数の韓国艦艇による活動を発見した。
国際的手順に従い(ICAO条約と航空法施行規則を例示)飛行を行った。
韓国海軍駆逐艦広開土大王から射撃管制電探照射を受けた。
かかる行為は武器使用に直結し極めて危険であり、強く抗議する。
射撃管制電探による照射を探知後、P-1は広開土大王への呼びかけを3波で行ったが返答はなかった。
【韓国側の主張】
遭難した北朝鮮籍漁船(1t未満の木造船)を広開土大王(韓国海軍)と参峰号(韓国海洋警察)が救難活動(SAR)中であった。
広開土大王は、射撃管制電探MW-08(3次元電探)も用いて捜索活動をしていた。
広開土大王は、射撃追跡電探であるSTIR180による電波照射はしていない。
P-1は高度150m、距離500mという至近距離を飛行しており、広開土大王側は、脅威を感じた。
かかる行為は極めて危険であり、抗議する。
日本側が根拠とするICAO条約は、民間航空機が対象であり、軍用機は対象とされない。
広開土大王は、日本側からの通信を国際VHS(FM変調)で受信していたが、受信状態が悪く“KOREAN COAST”(韓国海洋警察)と聞き取り、自艦への呼びかけとは考えなかった。
【双方が明らかにしていないこと】
当該事態が発生した座標
まず、
日本側は事態が発生した座標を明らかにしていません。報道では日本側EEZ内の能登半島沖としていますが、EEZは、排他的経済水域であって海洋資源の利用、採取を除き単なる公海です。従って、韓国側艦船は航海の自由を持ちます。北朝鮮籍漁船は、遭難、漂流中ですのでこれもEEZは関係ありません。(漁労をしていれば話は別)
次に、P-1が
哨戒飛行中に発見した艦船に接近するのは日常的業務ですので、それ自体は問題ありません。
韓国側主張にある高度150m、距離500mへの接近は、日本側の公開した映像からも概ねその程度と考えられます。これは航空法やICAO条約には則っていますが、これらの条約法規は、軍用機は対象外です。日本側は、民間航空機並みに自己規制していると主張したかったのでしょう。
日本側は、射撃管制電探による照射を受けたと一貫して主張していますが、一方で
MW-08(三次元電探)であったか、STIR180(射撃電探、イルミネーター両用)であったかは執筆時点に至るまで明らかにしていません。両者はともに射撃管制電探に類されますが、深刻さは全く異なります。
イルミネーターで照射された場合、それは発砲、ミサイル発射一歩手前であり、極めて危険です。
3波による広開土大王への呼びかけは、うち2波は航空用であり、艦船が受信していることを担保されえませんが、国際VHSは受信しています。ただし、FM変調のために混信には極めて脆弱ですので、意思疎通できない事態もありえます。