2015年に僅か3%の支持率しかなく、しかも政党間を渡り歩いた政治家が決選投票で55%の支持を得て勝利した背景には以下のような要因があった。
◎政治家の汚職蔓延に多くの市民はうんざりしていた。ボルソナロは過激な発言が目立つが、彼の27年の議員生活でこれまで一度も汚職で話題になったことがない点。
◎年間で6万人以上が殺害されているブラジルで、それを厳しく取り締まってくれる人物は軍人上がりのボルソナロしかいないと期待された点。
◎長引く経済の低迷で、労働者党の政権運営が支持を失った点。
◎ボルソナロは自分が分からないことは率直に分からないから専門家に相談するといった率直さに市民が興味をひかれた。
以上の要因からボルソナロへの支持が集まったそうだ。そして、彼を支持している層の60%は16歳から34歳の若者だというのである。(参照:「
El Confidencial」)
ボルソナロの大統領就任演説では以下のような点が注目される。(参照:「
El Espectador」)
◎主権国家として憲法を尊重する。
◎政治イデオロギーからの決別。即ち、13年間の労働者党の政権による社会主義的思想に基づいた政治からの解放。政治イデオロギーに左右されない政治を遂行するとした。
◎軍事力の強化と、それに関連して安全を維持するために自らの生命をそれに捧げる軍人や警察官を敬う。また、市民が自ら防衛できるように武器の所持を容易にする。
◎全ての宗教、特に伝統的なユダヤ教そしてキリスト教を尊重する。すべてのものの上に神は宿る。
◎社会主義思想による教育を排除して、倫理と道徳による価値を教育の柱とする。
◎経済改革。(※演説の中では詳細に述べていないが、4の改革が早々に必要だとされている。(1)政府の負担を軽減すべく年金制度の改正、(2)国の負債の削減のために公営企業を民間に売却すること、(3)公共支出の削減、(4)財政の黒字化である)そして、同時に外国からの投資の斡旋。
ただ、彼が掲げている政策を実行して行くための過半数の議席を持っていないという問題点は依然としてある。下院の定員は513議席で、ボルソナロの社会自由党は52議席。それに連携する意向を示している9政党の議席を加えると258議席で過半数に届くが、政党数が多いため造反する政党が出て来る可能性もある。その場合は複数の独立派政党の110議席の中から案件ごとに賛成を募って行く必要がある。野党は大統領決戦投票で敗れて労働者党の56議席を筆頭に7政党が集まって145議席となっている。