般若の背中にラッパーたちは夢を見た。伝説のMCバトルを振り返る「ダメリーマン成り上がり道」#12
言葉数が多いわけじゃないのに、「この人についていこう」と思わされる魅力がある。その人の行動を見ていると、「自分も本気でやらないと……!」と気持ちが奮い立つ。そういった不思議な魅力を持った人は、ビジネスの世界にもいるし、エンターテインメントの世界にもいる。特に「背中で語り、行動で示す」タイプの人間は、男性の世界で強く支持される。
日本のヒップホップ業界で、その典型例と言えるのがラッパーの般若だ。戦極MCBATTLE を主催するMC正社員の連載『ダメリーマン成り上がり道』の第12回は、彼が「HIPHOP業界で上司にしたい男NO.1」と語る般若の魅力について紹介する。
MC正社員が「日本語ラップに深くハマったキッカケも、MCバトルに入れ込んだキッカケも、すべてこの人だった」と話す般若。現在はテレビ朝日『フリースタイルダンジョン』のラスボスとしてもおなじみのラッパーで、1月11日には日本武道館でのソロライブ『おはよう武道館』も開催予定だ。なお般若は、その武道館ライブに向けて、11月にはベスト・アルバム『THE BEST ALBUM』をリリース。12月には自伝『何者でもない』も発売した。
「『何者でもない』は、般若さんのこれまでの人生だけでなく、日本のMCバトルの歴史に関わる内容も書かれていて、すごく面白い本でした。俺個人は特別に親交が深いわけではないですが、いろいろなタイミングで般若さんに奮い立たせられてきたので、この武道館公演を応援したくて。最近MCバトルにハマった人や、ヒップホップを好きになった人にも、般若さんの魅力を知ってほしいんですよ」
MC正社員が般若の存在を知ったのは、日本語ラップを聞きはじめて少し経ってからのことだった。
「『日本のラッパーをディスりまくってるヤバいヤツがいる』という評判を友達から聞いて、それが般若さんでした。その前からBUDDHA BRANDとかニトロ(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND)とか、曲がカッコいいと感じたアーティストはいましたが、人としてヤバいとか、すごく気になると感じた人は般若さんが初めて。当時、俺はまだサラリーマンをやっていて、営業の仕事をしていた辛い時期は、『おはよう日本』(‘04年)や『内部告発』(‘06年)の曲をよく聞いていました」
そして鮮烈な印象を受けたのが、般若が優勝したUMB2008の東京予選だ。
「MCバトルを熱心に見るようになって10年以上が経ちますが、UMB2008はパーフェクトなバランスの大会でした。まず、出ているメンバーが凄いんですよ。鎮座DOPENESSがいて、ppppppp!!!という名前でPUNPEEが出ている。当時のバトルシーンで圧倒的な存在感があったZONE THE DARKNESSもいるし、TKda黒ぶちもいる。東京のアングラシーンで活躍していた大佐やOSCARもいて、走馬党のARKや、ICE DYNASTYTのメンバーもいたり。あと、般若さんと関わりの深いRUMIさんやmasaruさんも出場していました」
ベスト16以降のトーナメント表と、エントリーMCの一覧が公式ブログに残っていたが、そこにはダースレイダー、DOTAMA、メシアTHEフライ、エムラスタ、CHINO、ISSUGI、マイクアキラ、BESなどの名前も。ここまで名立たるラッパーが出場したのは、「やっぱり般若さんが出たからだと思う」と話す。
「1年前のUMB2007の本戦でオープニングでライブをしたとき、般若さんは『来年、俺も出ようかな』って言っていたんです。まさかホントに出ると思ってなかったんですけど、翌年のエントリーの最初の方(3番目)に『般若』って書いてあって。それで、あれだけの人が集まったんだと思います」
名だたるMCを抑えて王者になったUMB2008
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2018.11.29
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