コスタリカの「再生可能エネルギー発電100%」にはどれだけ意味があるのか

足立力也
『ニューズウィーク日本版』によると、コスタリカが再生エネルギーだけで300日発電を続ける「新記録」を樹立したという。  この中で、筆者には気になるコメントがあった。 <再生可能エネルギーを推進するコスタリカの民間団体の活動家、モニカ・アヤラは300日間という記録について「素晴らしい」としながらもこう注意を促した。 「この数字は、コスタリカで消費するエネルギーの70%近くが石油だという弱点を隠している」>  では、この「記録」には実際どの程度の意味があるのか考察してみたい。

コスタリカ政府が「再生可能エネルギー発電100%」にこだわる2つの理由

風力発電

コスタリカの首都サンホセ郊外の山頂に立ち並ぶ風力発電所から、首都圏への電力を供給している

 まず、コスタリカ政府がしきりに「再生可能エネルギーだけで発電していますよ」と喧伝するのには、ふたつの意味があると考えられる。  ひとつは、その先に見据える脱炭素化社会への第一段階という意味。  現在、電気の需要と供給能力は、定期点検などで停める際の余力を含めてなんとかトントンくらいだ。つまり、既存の電力需要に対して、供給される電気のエネルギー源を再生可能エネルギーにほぼ完全に転嫁したということである(もともと発電における再生可能エネルギー源への依存率は高かったのだが)。  しかも、まだまだ地熱と風力の電源を精力的に開発しており、近い将来には電気の供給が「余る」状態になることが見込まれる。そこで、電気(正確には「電気に変換できるエネルギー」)を「貯める」技術の開発が鍵になる。  たとえば現在の日本では揚水発電がその大きな役割を担っているが、コスタリカは将来的に水素を含めた新技術を見据えていることは、以前に拙稿「プラズマエンジンをNASAと共同開発するコスタリカの零細ベンチャー企業が、水素エネルギーの未来を拓く」でも紹介したところだ。  それにめどが立てば、今化石燃料を使っているところを電気に置き換える。そこまでいって初めて「脱炭素化」が始まるわけだ。つまり、その序章に過ぎないということである。  ふたつめは、コスタリカお得意の「広報戦略」だ。  電力需要がそれほど旺盛でない人口500万人の小国(といってもニュージーランドと同じくらいである)とはいえ、国全体の電気を再生可能エネルギー源で供給していますよ、という「言葉やイメージのインパクト」は非常に強いものがある。  実際、だからこそこうやって『ニューズウィーク』などが取り上げている。「再生可能エネルギー100%発電」に関する世界の注目度は高く、私たちは完全にコスタリカ政府の広報戦略に乗せられているというわけだ。  それ自体は嘘ではないし、そうでないよりそうである方がいいに越したことはない。ましてや、それに反対する人は誰もいない。問題は、「真実の一部のみを語ることで別の真実に焦点が当たらなくなること」が起きているかどうかだ。
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周知の事実な「化石燃料頼み」
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