ビジネススキル向上の決め手は、解説よりも行動の反復

 筆者は身につけたいスキルをパーツ分解し、コアスキルを反復演習して、まさにその場で体得するビジネススキル向上プログラムを実施している。この連載のタイトルにもなっている「分解スキル反復演習型能力開発プログラム」だ。理論や理屈の解説をいくら聞いても、行動してみる、話法を繰り出すということができなければ、実践で役にたつとは言えないだろう。

スキル向上のヒントは素朴な疑問に宿る

photo via Pexels

 では、実践的な演習とは、どのようなものか? 筆者が行うプログラムでは、2時間の間、ほとんどの時間をロールプレイングや、グループ検討などの演習で進行して、ひたすら行動や話法を繰り出す訓練をしていく。  トレーナーである私はほとんど解説をしない。そのかわり、参加者に質問に答えていただくことでプログラムを進行していく。私が質問する内容は、20年来実施してきた過去の演習参加者が、行動や話法でスキルを発揮しようとしたときに疑問に思ったり、壁にぶつかったときに質問してくれたことだ。  企業で実施する研修のなかには、質問を受けつけなかったり、きわめて限られた時間でしか質疑応答をしないものもある。しかし、参加者が素朴に思う疑問や気にかかったことには、スキル向上の大きなヒントが含まれている場合が実に多い。  それは当然なことで、スキル向上をしたいと思うからには、それができない状況や克服したい現状があるのだ。疑問に思ったり壁にぶつかったりすること自体が、スキル向上の出発点と言えるだろう。演習中はほとんど解説をしないので、基本的な知識は事前に修得してもらう。疑問に思ってもらうことはとても重要なことなので、事前に何が気になっているのか参加者自身に見極めてもらうのだ。  そのために、私は演習に参加する前に、そのための図解ドリル書籍「チームを動かすファシリテーションのドリル」を読んでもらう。そして、たいていの場合、私に感想や質問をメールで送っていただき、返答するということを行っている。ドリルを読んでもらったり、私とメールでやりとりすることで、自分自身が発揮できていると思ったり、反対にできていないと感じるスキルが明確になっていくので、その後の演習効果は格段に上がる。参加者は発揮できているスキルをさらに高めてもいいし、苦手なスキルを克服してもよい。  読者の皆さんのなかでも、ドリルを読んで感想や質問を送ってみたいと思ったら、あとがきに記載している筆者のメールアドレスへ遠慮なく送っていただきたい。数日の間に返信させていただきます。どの程度、身につけたいスキルが明確になるものなのか、実感していただけることだろう。  演習では私が質問を投げかけ、参加者の方に考えていただき、答えていただく。そのうえで、これまでの参加者が最もスキルを高めることができた方法で演習を行い、そのスキルを身につけていただくということを繰り返している。
次のページ
相手の目を見て話せないときの解決法とは?
1
2
ひとつの質問で合意形成できる! ビジネススキル急上昇 日めくりドリル

ひとつの質問で、合意形成できる! 1日1問で確実にデキるようになる! 年間100社・5000人、20年以上実践してきた能力開発プログラム

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会