アジア系の台頭やブリグジット問題まで。’18年を象徴する音楽アルバム5選
「歌は世につれ、世は歌につれ」という諺があるように、ポップ・カルチャーとは、社会の動きに何かしら影響されて生きるもの。映画編に引き続き、‘18年に世界で話題になった音楽のなかから、特に社会性を表している作品を音楽ライター・沢田太陽氏に選んでいただいた。
ジャネール・モネイ『Dirty Computer』:マイノリティ
’18年、世界中の音楽媒体が選ぶ年間ベストでもっとも評価の高かったジャネール・モネイの通算3枚目のアルバム。最近は『ドリーム』などで映画女優としても活躍するジャネールだが、もともとはR&B/ヒップホップからロックやエレクトロまで次元を超越した、現在もっとも多彩な女性シンガーソングライターだ。
このアルバムでは彼女自身、その才能を比較されたことがあった、今は亡きプリンスにオマージュを捧げたサウンドが話題となった。
同時に「黒人でかつレズビアン」というマイノリティである自身の立場を生かし、同じ立場の人たちにたくましくプライドを持つように訴えかけたリリックが最強の武器となっている。とりわけラストの、オバマ元大統領のスピーチに触発されて作った、マイノリティたちの社会的な完全平等の願いを歌った「Americans」は圧巻。
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LGBTQなどのセクシュアリティや、人種問題など、マイノリティを巡る問題は減らず。前編でも紹介した杉田水脈議員のケースのように、政治家がヘイトを煽ることも多かった。
アリアナ・グランデ『Sweetner』:テロ
続いては日本でも大人気のアリアナ・グランデ。‘17年5月22日、イギリスのマンチェスター・アリーナでの彼女のライブ公演中に客席でテロが勃発。この事件は23人が死亡する大惨事となり、世界的な大ニュースとなった。
しかし、彼女はツアーをキャンセルすることなく続行。そして、このアルバムからの先行シングルとなった「No Tears Left To Cry」でも、あえてこの事件に正面から向かい合い、世界中に勇気を与えた。
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政情が不安定な中東やアフリカ、東南アジアでは今年も多くのテロ事件が発生。欧州でも8月にオランダで、12月にはフランスで銃や刃物を使った襲撃事件が起きた。
The 1975『A Brief Inquiry Into Online Relationships』:右傾化
現在、国際的に評価がうなぎ登りのイギリスのロックバンド、The 1975。「ミレニアム世代による『OKコンピューター』」などとも称される本作では、EDMやトラップといった今どきの21世紀世代の軟派な感性に訴えながら、レディオヘッドのようなシリアスで難しい音楽を同時にやるという偉業を達成した。
そんな世界でも稀有な試みが注目されているが、「ふと、ネットの時代における人間や社会について考えてみた」という若者の素朴な感性には忠実。なかでも最大の聴きどころは、ネットで進められた世の右傾化やネットで話題が過熱したゴシップやスキャンダルを羅列し、世のカオスを皮肉っぽい楽天性で歌った「Love It If We Made It」。同曲は早くも世界的な硬派批評メディアから「時代のアンセム」と称されるなど名曲化の様相を見せている。
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トランプ大統領の誕生を皮切りに、ブラジルで誕生したボルソナロ政権など、右傾化の流れは止まらず。政治家によるヘイトを煽る発言とインターネット上のデマやフェイクニュースの流布が問題となっている。
右傾化やネットでの誹謗中傷をテーマにした作品も
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