アイドルズ『Joy As Act Of resistance』:ブリグジット
ロックに元気が無くなって久しいこのご時世。「もっとガツンと来るパンクはないのか」とお嘆きの方に、このイギリスは南部ブライトン出身の5人組、アイドルズ(idles、怠け者の意味)ほどふさわしいバンドはない。
ヒリヒリするフィードバック・ギターに乗って、洗練なんてどこ吹く風で突っ走る猪突猛進さは言葉を超えて愛される要素が大きい。
だが、肝心の歌詞でも「俺のブラザーは移民たち。俺の魂の兄弟はフレディ・マーキュリー」と歌い上げるように、アンチ・ブレグジット、アンチ・オルタナティヴ・ライトの姿勢を真正面から叫ぶところが、これからの時代のブリティッシュ・パンクらしい。
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‘16年に行われた国民投票の結果、イギリスがEU離脱に向けて始動。’18年11月にはEUとテレーザ・メイ首相が離脱協定を取りまとめたが、議会承認を得られるかはわからずじまい。EU・イギリス、双方に緊張状態が続いている。
ミツキ『Be The Cowboy』:アジア系の台頭
最後に紹介するのはミツキ。まだ日本では一部の音楽ファンにしか知られていないが、アメリカ人の父と日本人の母親との間に生まれた28歳の彼女は、世界の音楽メディアの年間ベストで前述のジャネール・モネエと争うほど大絶賛を受けている。いわば、ポップ・ミュージックの世界における、大坂なおみのような存在なのだ。
今年は映画の世界でも『クレイジー・リッチ!』がほぼオール・アジア系キャストで初の全米1位に輝いたが、ミツキもアメリカで盛り上がっているアジア系女子のインディ・ロックのブームの象徴的存在となっている。
彼女は、マイノリティから来る疎外感を歌にして共感を呼び、変幻自在の幅広く多様な音楽性で聞く者を魅了。まだアメリカ国内のマイノリティのなかでも未知数なアジア系として、今後何を繰り出してくるのかわからない無限の可能性にも溢れている。
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ジャパニーズ・ブレックファスト、ジェイ・ソムなどアジア系女性シンガーソングライターの注目度が急上昇。映画界ではアジア系キャストで固められた『クレイジー・リッチ!』が全米1位の大ヒットを記録。韓国系俳優ジョン・チョー主演の『search /サーチ』もスマッシュヒットした。
<取材・文/沢田太陽>