ボックスは極右政党ということで、フランスの国民戦線、オランダ自由党、ドイツのための選択肢、イタリアの国民同盟といった過激な政党ではないかと想像されるかもしれない。ところが、ヨーロッパの大半の極右政党が現在の欧州連合の解体を主張していることに対し、ボックスは寧ろ欧州連合の存続を認めている。
但し、ブリュッセルの欧州委員会から加盟国の各国が主権を取り戻すべく、その改革が必要だと指摘している。現状の欧州連合だと、国家予算もいちいちブリュッセルの欧州委員会の承認が必要となっている。国の経済政策にいちいち欧州委員会が介入して来ることにボックスは批判して、その修正が必要だとしている。その一方で、欧州連合の単一市場は支持している。
ボックスの政策の焦点は特に国政に向けられている。その中でも他党と異なっているのは自治制度の廃止である。ボックスはスペインで唯一国会が政治を司るところだとしており、各自治州が独立した政治の運営を廃止することを主張している。勿論、その中にはカタルーニャの独立は容赦なく否定しており、また独立を主張する政党の非合法化も要求している。
また、教育、保健衛生、法務は自治州ではなく、中央政府が担うものだとして国家の運営に任せることだとしている。
ちなみに、闘牛がスペインの動物愛護運動などからの訴えで廃止する傾向にあるのをボックスは、闘牛はスペインの文化遺産だとして保護することを主張している。(※参照:「
El Diario de la Marina」、「
El Espanol」)
ジャーナリストのイグナシオ・クレスピー・デ・バイルダウラは、「ボックスはヨーロッパの右派系ポピュリズムと世界の中道派自由改革の間を進む政党だ」と指摘している。また、ボックスの党首のサンティアゴ・アバスカルを譬えて、「トランプ大統領のようではなく、マイク・ペンス副大統領に近い人物だ。マリーヌ・ル・ペンではなく、彼女の姪マリオン・マレシャルまたはニコラ・デゥポン・エニャンに近い」と評価している。
スペインの著名政治評論家で国民党の前身である国民同盟の創設当初の幹事長を務めたホルヘ・ベストゥリンヘンは「ボックスは1977年6月の国民同盟だ」と指摘した。即ち、その時期に国民同盟が設立され、その後この同盟は国民党に変身して行くのであるが、ボックスはその変身する前の生き写しだというのである。(※参照:「
El Diario de la Marina」)
その党首、1976年生まれのサンティアゴ・アバスカルはバスク地方出身で、彼の父親の代から国民党に属し、彼は市会議員を経たあと、州議会議員となり、1994年まで国民党に籍を置いていた。ボックスを創設したのはラホイ首相のカタルーニャの独立への動きに対する対応の生ぬるさを感じたのが結党を決めた最大の理由だとされている。
カタルーニャの独立問題そして不法移民の問題が深刻になって行けば行くほど、ボックスの国家の統一・移民の排斥を打ち出す姿勢を支持する人が増えていった。というのも、特にそれまで国民党のラホイ前首相のこれらの問題に取り組む姿勢が優柔不断で、しかも欧州連合の難民の振り分けの指示に言いなりになっていった政治姿勢に不満を募らせていた市民がボックスに同調したのである。(参照:「
El Pais」)
それが今回のアンダルシア州議会選挙でも反映されていて、ボックスの票が伸びた要因として世論調査40dBの分析を『El País』が12月9日付けで報じている。それによると、ボックスに投票した要因には不法移民に反対しての票が41.6%、カタルーニャの独立への動きの前にスペインの統一を主張した票が33.7%、カタルーニャの独立に断固反対する姿勢の票が28%、自治州制度の廃止を訴えた票が24.9%という以上の結果がボックスの12議席の獲得に繋がったと『
El País』(12月8日付け)が分析している。